大切なのは自分の選択に責任を持つこと
〜大塚賞授与式および授賞者講演会に参加して〜
文責:木村幹子(東北大学大学院 生命科学研究科)
月刊うすじり愛読者のみなさま、どうも、ご無沙汰しております。ラッシャー、ウオレンジャーレッドなど、数々の(というほど多くない)異名を持つ木村です。昨年なんとか無事博士課程を修了して以来の登場です!(誰も望んでないよ…とは思っても言わないで〜)
さてさて、今回久しぶりに記事を書く機会を頂戴いたしましたのは、昨年度の北海道大学大塚賞に、畏れ多くも私が選出され、その授与式についてレポートさせていただくことになったからです。
「北海道大学大塚賞」は北海道大学における男女共同参画事業の一環として,研究者を目指す女子学生育成のため、2005年に設けられた顕彰制度です。毎年十名程度が選出されます。大塚賞という名前は、北海道大学名誉教授、薬学博士でおられます大塚榮子先生に因んでいます。
(出典:北海道大学http://www.hokudai.ac.jp/bureau/gakumu/gakusei/shogaku-shorei.htm)
宗原先生から、一生に一度だし応募してみたら?とお声をかけていただき、まぁダメもとで・・・と思って応募してみたのですが、まさか自分が受賞するとは思ってもみませんでした。環境科学院の事務の方から授賞報告のお電話をいただいた時は、あまりにびっくりして、最初何を言っているのかわからなかったぐらいです。
3月15日行われた授与式では、大塚名誉教授も参列する中、佐伯総長より賞状を手渡されました。そこでようやく、あぁ、私は大変名誉ある賞を受賞することができたのだ、という実感がわき、大変厳かな気分になりました。
授与式の後には、北海道大学女性研究者支援室が主催する大塚賞受賞者講演会が開催されました。今年度の受賞者のうち、大竹さん(理学院)・大塚さん(獣医学研究科)・羽田さん(生命科学院)の3人から、授賞のきっかけとなった自身の博士論文の内容について簡単にご講演いただきました。3人とも、大変面白い研究をしておられ、なおかつ7分間という短い時間の中で膨大な博士論文の内容を大変わかりやすく面白く伝えていて、その発表スキルにも感嘆しました。改めて、この方たちと同じ賞を受賞できたことを誇りに思いました。
受賞者の公演に先立って、北海道大学女性研究者支援室長の有賀早苗先生より、女性研究者支援室が行っているプロジェクトの紹介や、目指している理念などの説明と共に、女性が輝いて生きるためには、というようなご講演をいただきました。私個人的には、有賀先生のお話が、もっとも印象に残っています。有賀先生は、私たちは第3世代の女性研究者だとおっしゃられていました。第一世代は、単に「女性だ」というだけで理不尽に否定・拒絶されたり、能力を正当に認められなかった世代。第2世代は、男女雇用機会均等法をはじめ男女共同参画推進により「女性でも」受け入れられるようにはなったけれど、周囲の理解や支援環境が得られず、特に出産・育児等を経てキャリア継続することが困難で悔しい思いをした人がたくさんいた世代。そして私たちの第3世代は、持続的発展社会やイノベーション創出のために望まれる多様な人材として「女性だからこそ」と迎えられ、必要な支援体制も整備された環境でのびやかに活き活きと能力を発揮することが期待される世代です。
(出典:北海道大学女性研究者支援室 http://f3project.ist.hokudai.ac.jp/aboutf3/index.html )
有賀先生はまた、現在世界で活躍されている様々な女性の言葉を紹介してくださいました。もっとも印象に残っている言葉は、HIVウイルスを発見し、2008年のノーベル医学生理学賞に選ばれたフランソワーズ・バレ=シヌシ博士の言葉です。彼女は、まだ女性が働くことが難しかった時代に、出産をせず、研究に賭ける人生を選択しました。女性研究者を取り巻く環境を尋ねられた時、「私の選択は個人的なもの。他人に勧めるものではありません。子どもを育てながら研究を続ける女性もいる。大切なのは(自分の選択に)責任を持つこと。それが私の唯一のメッセージです」と答えました。
(出典:朝日新聞科学面 https://aspara.asahi.com/blog/science/entry/LeB6ek8Hb3 )
大塚先生や有賀先生は、第1世代、第2世代を必死で生き、第3世代への扉を開いてくださいました。ここからどう生きるかは、もう、性別や社会や体制がどうということではなく、自分自身の責任で選択するべきことなのです。それが私たち第3世代の女性研究者に求められていることなのだと、身が引き締まる思いでお話を聞きました。
また、昨年度の受賞者であります作田さん(北海道大学理学研究院特任助教)より、今年度受賞者に向けたメッセージもありました。その中で印象に残っていることは、「賞の歴史は、これから受賞者が作っていくのだ」ということです。大塚賞の歴史はまだまだ浅いけれど、これから、大塚先生の名を冠したこの賞をいただいた私たち自身が、大塚先生の名に恥じない活躍をすることで、大塚賞自体の名が意味を持ってくるのです。またまた責任重大だなぁと、身が引き締まりました。
最後に大塚名誉教授からご好評と激励のお言葉をいただき、講演会が修了しました。そのあとは、用意していただいた軽食をつまみながら、大塚先生や有賀先生を交え、他の受賞者の方との交流会が行われました。受賞者の方と、講演では聞けなかったお話を聞いたり、今後の進路や目標などを聞いたりする時間を持てました。他の受賞者の方の思いを聞くことは、私にとってたいへんよい刺激となりました。
現在私は、東北大学大学院生命科学研究科で研究員としてはたらいています。具体的には、生物多様性の評価指標に関して、現在どのような指標が使われていて、それにどのような科学的な根拠があるのかをレビューすること、そして、企業の方々と連携して、実際に生物多様性に配慮した土地利用に関するガイドラインを作成するということを目標として研究をしています。以前より、環境問題に関して何かできないか、もっと社会にかかわる研究ができないかと思っていましたが、今、そのチャンスが与えられています。このチャンスを活かすか殺すかも自分次第。自分の選択に、責任をもって進んでゆきたいと思います。
最後になりますが、大学院での研究全般にわたって根気強くご指導くださり、またこの賞にご推薦くださった宗原先生に、心より感謝申し上げます。