調査研究報告24

 文責:宗原

Comparative studies of testicular structure and sperm morphology among copulatory and non-copulatory sculpins (Cottidae: Scorpaeniformes: Teleostei)

(邦訳---交尾型カジカと非交尾型カジカの精巣構造と精子形態の比較研究)

 

Yasunori KOYA, Youichi HAYAKAWA, Alexander MARKEVICH & HiroyukiMunehara Hiroyuki

 

Ichthyological Research 58: 109-125 (2011)

 

 

論文解説

 

『カジカ科の交尾多系統進化

-精巣構造と精子頭部の形で、交尾か非交尾かがわかる-

 

 形態や色彩が多様なグループというのは、魚類ではいくつもある。カワスズメ科、ハゼ科、フグ目などが、そうした例に挙げられるだろう。しかし、繁殖様式の多様性という点では、カジカが抜きん出てる。雄が卵を保護する種、雌が保護する種。ホヤやカイメンなど無脊椎動物の体内に卵を隠す種、交尾する種やしない種。交尾する種には卵生もいれば、胎生もいる。こうした繁殖様式を一種ずつ調べていくのは、非常に面白い。しかし、繁殖生態の研究は季節も限られ、調査がなかなか進まない。交尾するかしないかがはっきりわかっている種すら、そんなに多くはないというのが現状だ。それでも、わかっている種を調べることで、わかることもあるはずだ。ということで始めたのが、この論文である。

 調べてみると、精巣の構造や精子頭部の形が種によって様々に違うことがわかった。それらを類似点によりいくつかに分けてみると、面白いことがわかった。まず、生殖器官や精子の形状の違いが交尾種と非交尾種の繁殖様式の違いに対応する点だ。非交尾種は精子を海中に出すのに対して、交尾種は卵巣腔液中に放精する。生殖器官にみられる違いは、精子が卵と出会う媒質の違いに関係してくるのだろう。カジカ科内では、非交尾種から交尾種が進化したと考えられるので、繁殖様式の進化に合わせて生殖器官の構造や機能が進化したのだ。そして、もっと面白いことは、生殖器官の進化が、カジカ科内の系統関係の中で様々な場所で起こったことだ。つまり、カジカの交尾は、多系統に進化したことが支持されたのだ

 カジカ類については、分類から分子系統、生態、保全まで扱った専門書が近々出版される予定だ。本論文の内容についても詳しく紹介されるので、日本語で知りたい方は、お待ち下さい。

 それでも詳しく知るには、やはり原著も読んで欲しい。別刷りをお読みになりたい方、連絡待ってます。

  PDFファイル請求先    

  koyaあっとgifu-u.ac.jp

hmあっとfsc.hokudai.ac.jp  (あっとは@に変換して下さい)

 

 

【要約】

 カジカ科の雄の生殖器官の形態的特徴と繁殖様式(交尾か非交尾か?)の関係を明らかにするため、9種の精巣の構造と19種の精子頭部の形態を調べた。精巣の構造は、精子の輸送と貯精システムに基づいて5つのタイプに分けられた(Fig.11)。(1)輸精管が明瞭な外部構造を取っていない型(ND-Fig.12の記号,以下同じ)、(2)精巣に沿って明瞭な輸精管を持つ型(AD)、(3)明瞭な前部輸精管が精巣の背部に沿い、後部輸精管が精巣の後方にまで伸長する型(PD)、(4)精巣に沿って明瞭な輸精管があって精巣の後方で左右の管が融合し貯精嚢を形成する型(ADV)、(5)輸精管が精巣に付随せず管がなく嚢状で,精巣と貯精嚢が後部輸精管に直接つながっている型(NDV)。カジカ科においては、NDが原始的で、ADはすべての非交尾型カジカに普通に見られると考えられる。ADVNDVのような精巣と貯精嚢の付随は、交尾種にのみ見られた。

 精子頭部の形態は、頭部長/幅の比で3タイプに分けられた。丸形---2、中間型---3≧かつ>2、細長型---3。精子頭部のタイプは、繁殖様式と密接に関係した。つまり、非交尾種は丸形、交尾種は中間型と細長型である。非交尾から交尾に進化したカジカ科において、これらの結果は、精巣の構造と精子頭部の形態がADで丸形から貯精能があり細長型の精子を持つ精巣に進化したことを示唆する。

 

  

  





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