調査研究報告32
ヒメイカ越冬成功論文の紹介を月刊うすじり100号のお祝いに添えて
佐藤成祥
月刊うすじり100号、おめでとうございます。
あ、僕ですか?皆さん覚えていますかねぇ。
初代、管理人の佐藤でございますよ~。
久々の登場でございます。ご無沙汰していました。
なんか、卒業後もちょくちょく研究成果報告してるじゃないかと思ったあなた。
相当な「月刊うすじり」マニアです。
ただ、あれは僕の名を騙った偽佐藤ですのであしからず。
誰だか分かりませんが、偽物はとんでもない報告記事を書いているので油断できません。
本当に、油断できません。
さて、僕が修士1年の時に創刊した「月刊うすじり」ですが、
その当時はまさか100号まで続くとは思っていませんでした。
それもこれも律儀に管理人を引き継いでくれた後輩たちと、宗原リーダーの尽きない情熱の賜物でしょう。
創刊からもう9年も経つと思うと感慨深いですね。
私が現在も研究対象としている、運命の研究対象、ヒメイカと出会ったのも9年前でした。
宗原リーダーから「小さいイカがいるからやってみたら。」と勧められ、はじめたヒメイカ研究。
いざ採集してみると死滅回遊というオチになってしまい、その当時はたいそうがっかりしたものです。しかし、その後も惰性で毎月なんとなく採集を続けていたら、なんと奇跡的に冬の水温が異常に高かった2007年、ヒメイカが獄寒の臼尻の冬を生き延び、越冬を成功させたのです。
このニュースは以前の記事(*vol26にリンクを張ってください)でもお伝えしました。
あれから6年経ってこの事がようやく論文になりました。
この研究成果報告を100号のお祝いに乗せてお届けできるのもなかなか良いものですね。
「月刊うすじり」がちょうど100号の大台に乗ると聞いて、居ても立っても居られず、筆を取った次第です。決して、記事を書かなければあること無いこと書くぞ!と脅されたわけではありませんよ。
ここまで来たなら、200号。いや1000号も夢ではないはず。
僕はこれからも「月刊うすじり」が末永く続くことをそこそこ願っています。
1000号めざして、がんばれ後輩たち!負けるな後輩たち!
宗原リーダーは修論提出締め切り1週間前でも平気でホームページの催促をしてくるぞ!!
修論の催促は特にしてこないぞ!(それはそれでどうなんだ。)
The Possibility of Overwintering by Idiosepius paradoxus (Cephalopoda: Idiosepiidae) at the Northern Limits of its Distribution
(邦題:北限のヒメイカにおける越冬の可能性)
Noriyosi Sato and Hiroyuki Munehara
American Malacological Bulletin 31: 101-104 (2013)
【要約】
これまでヒメイカは、分布の北限と考えられる臼尻において、9月から12月までの4か月のみ出現しており、この地域では越冬できないことが示唆されてきた。2006年から2007年にかけての冬は例年に比べ海水温が高かった。そこで、我々はヒメイカがこの地で越冬したか調べるために、周年採集し、発生パターンと水温データを比較した。高水温の冬から開けた2007年は以前採集されることが無かった4月から8月にかけてヒメイカの出現が確認された。これらの結果からヒメイカはこの年、臼尻で越冬を成功させたことが示唆された。しかし、水温が再び下がった翌2008年は例年通り4月になってもヒメイカは採集されることが無かった。そのため、越冬成功は一時的なものだったと思われる。

図1.臼尻でのヒメイカの出現パターン。A今回のデータ。B死滅回遊であることを示した以前のデータ。白点は雌、黒点は雄、グレーのラインは水温を示す。

表1.2月と3月の10日ごとの平均水温と最小水温データ。グレーで示す2007年の水温が他の年に比べ高いことが分かる。