自転車で行く札幌~臼尻ドM紀行(奇行)~
文責:富樫
2012年、夏。
僕は札幌-函館間にある数々の峠に挑み、敗北した。
悔しかった。
これは自分自身に対する完全な敗北だった。
そして何より一緒に付きあってくれた友達に申し訳なかった。
そして2013年、夏・・・
去年の夏、僕と友人Tは自転車にはまっていた。最近流行のクロスバイクというやつである。ママチャリに比べるとかなり快適に速く走ることができ、僕はこいつとならどこまででも行けるんじゃないかと思っていた。
そして、僕とTは思い立った。
「そうだ、札幌へ行こう!」
その距離280㎞。今思えば、陸上部であるTはともかくとして、大した運動もしていなかった僕がいきなりこなせる道理ではなかった。
そして札幌を目前に、僕の足は止まった。残り50㎞。ペダルを踏み込むことができなかった・・・。
自転車をコンビニで買ったゴミ袋に入れ、電車に揺られること1時間。僕たちは札幌に到着した。
その後Tは一人で札幌-函館間を完走したが、僕には自転車で函館に帰る体力は残されていなかった。
この出来事は僕の心の中に大きなしこりを残した。さらにこの後2人共自転車を盗まれるという事件が起こったため、リベンジすることすら許されず、北海道は雪に包まれていった。
そして今年の春、僕とTは再び自転車を手にした。
ロードバイクと呼ばれる、より速く走ることに特化した自転車である。
そして、この時に決意したのである。
「今年こそは必ず札幌-函館間を往復してみせる。」
臼尻という最高の練習環境の下で、夏に向けてトレーニングの日々を送った。
途中、千葉に行くというハプニングもあったものの(月刊臼尻vol.98参照)、晴れた日は毎日のように自転車で走り続けた。
話は飛んで9月16日。実はこの日は大沼ライドというイベントが行われていた。
美しい風景を見ながら、地元の食材を味わい、地域交流を楽しみながら自転車での完走を目指すというイベントで、函館では初めて開催された。
この存在は前々から知っていたが、なかなか踏み出せずにいたところ、同じくチャリ仲間であるOから声がかかり、Tを含め3人で出場することになった。
しかし、開催当日、知っての通り台風18号が日本を通過。嵐のような雨が降り続けており、中止も致し方ないかといった状況だった。しかし、Facebookに雨天決行の文字が。
「マジか・・・」
おそらくエントリーしたすべての人が心の中で思ったのではないだろうか。
そこにTからの電話。なんと、別の友人が車の鍵を持って行ってしまったため、車を出すことができず、Oと一緒に自転車で会場まで向かうというのである。
周りは仲間内で参加する人が多かったため、一人で受付するときの心細さといったらなかった。
出走の時間には3人とも無事に揃い、出走の際に司会のお兄さんに「ソフトメンズ」と名付けられスタートを切った。言いえて妙である。
結局、終始雨であり、天気と景色には恵まれなかったが、休憩ポイントで食べたカジカ汁は冷えた体に染み渡った。途中Tのタイヤが原因不明のパンクに見舞われるといったハプニングもあったが、スピード商会(函館の自転車屋)のメカニックさんに助けてもらい、無事3人そろって完走することができた。
普段は見れないような自転車もたくさん見ることができ、自転車が好きな人たちとの良い交流の場にもなるので、来年は晴れてくれることを祈る。
それぞれ違う道に進む3人だが、またこのメンバーでイベントに参加できればと思う。

話は戻って札幌往復であるが、Tと予定が合う日が18~19日しかないということが発覚。
まさかの弾丸ツアーである。しかし、ここまで来たら四の五の言っても始まらない。
そして僕の戦いは再び始まった。
18日
朝4:00函館出発。
「この坂はゆっくり走って温存していこう。」
そう持ちかけてきたのはTであったはずだが、大沼(30㎞地点)の坂をまあまあのスピードで攻めている。
若干の不安を抱きつつ札幌ライドはスタートした。
黒松内(120㎞地点)まではなかなか順調に進み、道の駅でお昼休憩をとった。
実は黒松内の道の駅のピザは有名で、一度食べてみたかった。結論から言うとこのピザ、かなりうまい!生地がもっちりとしていてかなり好みである。ちなみにTに言わせると「トマトソースがいけてる」とのことである。
僕はあまりにもうますぎて冷静な分析はできなかった。だって全部うまいし・・・。

ちなみに前回はこの辺りから体力的にきつくなり、坂が連続するためかなり消耗した。しかし、今回の僕は一味違うのだ。疲れてはきているものの、不思議と「まだ、頑張れる」という気持ちが残っていた。
坂でTに置いて行かれ、下りで挽回するというのを繰り返し(なぜかこの時点でも攻めている)、前回の鬼門、稲穂峠(180㎞地点)まで到着した。前回はここで脚を使い切り、敗北したのだ。
いざ行かん!と思ったその時、まさかの雨。しかし、前回雨に降られた教訓を生かし、ユニクロの撥水ジャージを身にまとい峠に突撃した。
永遠と続く緩い坂は本当に辛く、何度も心が折れそうになった。でも目の前にはTがいる。ここで引き離されるわけにはいかない。そうやってTに引っ張られ続け、どれくらい時間がたったのだろう。トンネルを抜けた先には青空と下りがあった。ついに稲穂峠を上りきったのだ!
この時点で去年の自分は超えた。その思いが心を満たした。
だがしかし、ここがゴールではないのだ。
後は唯々無心で走る。Tと一緒にゴールするのだ。
青看の数字がどんどん小さくなっていく。50㎞・・・30㎞・・・10㎞・・・
そして
ついにゴール!!
総走行距離278㎞ 時間にして15時間。
長かった、本当に長かった。
感動のあまり温泉でこっそり泣いていたのは秘密である。
しかし、心はすでに明日に向いている。到着したのも束の間、次の日の朝5時には出発である。(泊めてくれた先輩、本当にありがとうございました。)
19日
朝5:00札幌出発。
「い・・痛い・・・ケツが・・・」
やはり、280㎞もの間突き上げられ続けたら人のお尻は耐えられないのか。
帰りはまさかの中山峠コースである。
耐えられる気はしなかったが、泣き言を言っても始まらないので黙ってスタート。
しかし、この中山峠のルートは本当に辛かった。札幌をスタートした時点から常に上りが続き、結局中山峠の道の駅までほとんど上りっぱなしであった。
Tがペースを合わせてくれたおかげでなんとか登りきることができたが、一人では無理だったかもしれない。
行きと違って、帰りはかなり消耗していたため、ペースが落ち気味だったが、Tが常に引っ張っていてくれたおかげで最後まで良いペースで走りきることができた。
総走行距離248㎞ 13時間でのゴールだった。
今回の函館-札幌間の往復は、もしTに断られたら一人でもやろうと考えていた。
でも快く引き受けてくれたTに感謝。Tがいなければこんな良いペースでクリアすることはできなかっただろうし、そもそもゴールできたかもわからない。
こんな僕に付き合ってくれたT、本当にありがとう!!
実は今回の札幌ライドは余裕がなかったため、ピザ以外まったく写真を撮っていなかった(汗)。この思い出は胸に深く刻んでおこうと思う。
また、今回のライドで今まで苦手意識のあった坂が少し好きになってきた。
やはり、苦手なものほどクリアできた時の達成感は大きいと思う。
この旅は大学生活の中でも最高の思い出の一つとなったし、大きな自信につながった。
最高の思い出よありがとう。
そして僕は再び走り続ける・・・来年の夏に向けて。