卒論発表・修論発表報告

集大成というスタートライン


佐藤君は世界最小のイカであるヒメイカについて、平衡石の日齢の観察、飼育実験などから、生息水温が異なる個体群間の生活環の違いや分散様式について明らかにした。
わたくし木村は、臼尻で繁殖するアイナメ属3種の交雑現象について、繁殖場所の選好性に関する調査とDNA分析の結果から、人工構造物による生息地隔離の撹乱についての検証を行った。
田中君は臼尻周辺の浅海底の着底稚魚相について、新型そりネットを用いて季節変化を調査した結果を海洋構造と絡めて考察した。

(3人の研究内容については、随時このコーナーにアップしていく予定です)
ここまでの道のりを、少し紹介してみたいと思う。

軌跡

4年生とM2に正月はない。毎年1月2日に先生のご自宅に招待して頂いて新年会を行うが、一説には実家に帰ることが出来ない彼らを慰める意味もこめられていると言う。それもそのはず、暗黙の了解で修論の初稿提出期限は12月31日、となっているが、うん、それはちょっとムリ。ちなみに私は年が明けて12日ぐらいに提出したと思う(これは極めて遅い部類に入る。皆さん真似しないで頂きたい)。1年しか研究期間がない4年生にとっては、この時期まだデータが出揃っていない事が多い。切片を切っていたら年が明けた、というような話は数え切れない。そして初稿というのはたいていの場合、単なるたたき台にしか過ぎない。大幅に路線変更をすることになる。修論は直接の指導教官の他に2人の先生に見てもらうことになっている。早くその先生方にも原稿をお渡ししなければならない。たくさんのコメントがついて原稿が戻ってくる。提出まで、あと○日・・・。
昼の12時まで、という提出期限に、滑り込みセーフで提出したと思ったら、待っているのは今度は口頭発表だ。今年は提出から発表までの期間が4日しかなく、まさに息つく間も無い、といった感じ。佐藤君はそれに加えて、タスマニア島で開催される国際頭足類学会でも発表することになっていた。しかも修論発表の日に日本を出発というハードスケジュール。さらに彼にはもうひとつ大きな仕事があった。「あー、ホームページも更新しなければ・・・」。

重圧の行き付く先

密閉容器に空気をどんどん入れてゆけばいつかは爆発する。人間は本能的に重圧を開放する穴を持っているようだ。臼尻の外食事情は極めて劣悪で、手間をかけてご飯を作る余裕が無い私たちに、「たまにはおいしいものを食べて」という逃げ道は用意されていない。特に夜中はなすすべがない。そんな我々に救世主が。昨年4月、近くにコンビニエンスストアーがオープンしたのだ。夜中、誰からともなく「ねぇ、ロー○ン行こーよぅ」と言う話がもちあがる。佐藤君はどういうわけかこの頃、尋常ではなくジャンケンが弱く、みんなによくデザートをご馳走してくれていた。夜中のコンビニが、彼にはかえって重圧になっていたと言う噂もある。あまりに毎晩同じ面子で通いつづけていたので、店長さんが時々おでんをご馳走してくれたりした。談話室で狂ったように「うめぇー」「うめぇー」と叫んでいたのを思い出す。

・・・そうか、彼にのしかかっていた重圧は、こうして開放されたのか。あぁ、良かった。

伝えたいこと、伝えるべきことを、正確に、余すところなく伝えられる人はすごいと思う。1年間、あるいは2年間、自分が何を目指し、どんな取り組みをして、何がわかったのか。そして何を考えたのか。すごく大げさに言えば、卒論、修論を通してどんな世界を見ているのか。熟練者の発表は聞き手をその世界に引きずり込む。聞いているこっちがどきどき、わくわくする。そんな発表が出来るようになりたい。
私個人的に言えば、残念ながらまだまだその点に関しては発展途上だ。伝わらなかった悔しさが、自分はやっぱりこれがしたいんだー、とい気持ちを再認識させる。

伝えたいこと > 伝わること

この時期、4年生や修士2年生にとっては、まさに集大成と言うべき大イベントがある。他の研究室の学生や教官の方々を前に、1年間のあるいは2年間の研究の成果を発表する場である。2月6日、まずは修論発表、続いて3月2日には卒論発表がとりおこなわれた。我が実験所メンバーからは、M2の佐藤くん、私、そして4年生の田中くんが、この晴れ舞台(となるか処刑場となるか・・・)に臨んだ。
修論発表が終わり、卒論発表も終わり、先日来年度から入ってくる新四年生を交えて、実験所でお疲れ様会をやった。お疲れ様会のはずなのに、卒論はどうだったね、修論はこうだったね、というような話はあんまりでなかった。発表を終えて、それぞれに思うことがあったのだろう。みんなもう、気持ちは次に向いていた。それぞれが、あれがしたい、 これがしたいとか言う夢物語を語っているうちに夜が明けた。新4年生の二村君は暑苦しい奴等だ、と思ったに違いなかった。田中君談「修論ではもっとこう、熱く議論できるような研究がしたいな」
いいねぇ、そういうの大歓迎だよ、田中君。

(木村)

田中君による卒論発表の様子
(観客からの質問にも堂々と答えられていた。立派、立派!)


修論発表が終わった。いろんなことが不完全燃焼だったが、取り敢えず一件落着だ。私はかねてより「修論が落ち着いたら・・・」と思っていた映画を見に行き、ビデオを借りまくって、大変だらだらと時を過ごした。あぁ、佐藤君は今ごろどうしているだろうか。息つく間もなくオーストラリアへ旅立った同期のことを思う。国際学会だし、ものすごいプレッシャーなんだろうなぁ
(大変真剣にディスカッションをしている模様)。

北洋研でも卒論発表の後、お疲れ様会をやった
(桜井先生じきじきにお好み焼きを焼いてくれた。うーん、おいしかったなぁ。ちなみに手前の2人も卒論発表を終えたばかりの4年生。 左:田原くん 右:遊三君 )




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