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平成29年度入学式 総長告辞

 新入生の皆さん入学おめでとうございます。
 この春、北海道大学は、2,700名を新入生として迎えました。
 希望とエネルギーに満ち溢れた皆さんが北大に入学されたことを、北大を代表して、心から歓迎いたします。

 皆さんが入学された北大は、今から141年前の1876年に、北海道の開拓の任に当たる人材を育成するため、明治政府が欧米の大学に匹敵する高等教育機関を目指して設立した「札幌農学校」が、創設の起源です。
 当時は、明治維新を経て、我が国が近代国家へ歩み始めた時期であり、東京大学を初め幾つもの大学が、同じ時期に実学を重視した、国家と産業の近代化を担う人材の育成を目指し、その礎を築きました。
 しかし、札幌農学校では、実学の農学だけではなく、アメリカのリベラルアーツ教育が行われ、数学、化学、生物学から語学、歴史、経済学まで幅広い基礎教育が実施されていました。そこでは、人間形成の基となる幅広い教養を培う「全人教育」の実施のみならず、未踏の学問領域を積極的に探求する「フロンティア精神」を持つこと、国際性や多様性への柔軟な感受性を育成する「国際性の涵養」を行うこと、そして、物事の本質を見極め、それを社会に活かす実のある研究を進める「実学の重視」を念頭に置いた教育が実践されました。
 皆さんは、今日、北海道大学の学生として、この建学の精神を引き継ぐアカデミック・コミュニティの一員となったのです。

 北海道大学は、我が国の基幹総合大学の一つであり、12の学部、21の大学院、3つの専門職大学院を有し、日本全国はもちろん、80カ国を超える世界中から集った約1万8,000名の学生がキャンパスで学んでおり、文字通り、世界に開かれた大学です。
 キャンパスは、札幌の中心部に位置し、日本でも有数の規模を誇る緑豊かな札幌キャンパスのほか、函館キャンパス、全国6カ所にある広大な研究林、臨海・臨湖実験所、果樹園、植物園、牧場など、実に660㎢、札幌市の面積1,121㎢と比較すると、札幌市の約60%にのぼる土地、そして練習船2隻をも有しており、自然に恵まれた環境の中で世界的なレベルの教育・研究が行われています。皆さんには、北大キャンパスを、できる限り歩き、改めて北海道大学のスケールの大きさを味わってもらいたいと思います。

 大学生の時代は、人生の中でもっとも自由な時間を享受でき、自分の可能性を無限に試すことができるかけがえのない時期です。しかし、科学技術が急速に発展し、グローバル経済の中で世界中に拡散する状況の中では、様々な新しい現象や変化が問題となり、皆さんにはそれを解決することが求められています。このような状況では、過去の延長線上で物事を考え、問題を解決することは難しいといえます。
 すなわち、自らの頭で考え、新しい状況を自ら理解し、その理解に基づいて問題を解決しなければなりません。解決策を過去のデータから探すのではなく、自らが解決策を創ることが求められます。
 既存の価値や思考方法自体を疑い、それを変え、時には壊していくことが「考える」ということです。「考える」ためには、既存の価値や思考方法に拘束されていてはなりません。この「考える」という営みのためには大学は自由でなければなりません。このことを誰もが認めていたことに、大学が存在する特異性があります。
 ぜひ、単なる知識の修得ではなく、考え方、思考法を身に付けて下さい。そのためには、問題となっている現象や変化がどのようなものであり、どこで生じているのか、皆さん自らが考えるべき問題を特定し、自ら問題を解決する論理を組み立て、次にその論理が正しいかを確認し、その解決策を実行して行かなければなりません。これが大学で学ぶ学問の方法論そのものです。すなわち、自ら考えるべき問題を研究課題とし、問題を解析し、説明しうる仮説を作り、その仮説が正しいかを実験や統計さらには、過去の文献等を用いて検証し、正しい結論を導くわけです。

 しかし、大学で研究を開始するまでには、その基礎となる幅広い知識を学び、自由自在に取り扱えるようになる必要があります。これは、札幌農学校の「全人教育」の建学の精神に則ったものであり、北大がその伝統を保ち続けてきたことを、北大の一員として知っておいて欲しいと思います。
 新入生の皆さんは、最初の1年間、高等教育推進機構に籍を置き、文系と理系に大きく分かれて、様々な学問分野の問題や知見に触れながら、自らの関心を広げ、個々に修学のスタイルを作って行くことになります。
 このようにして教養を培うことを基礎としてこそ、各学部の専門課程における修学も、実を深めて行くことができるのです。また、これは皆さんが自らの頭で考えることを可能とし、さらに各人の将来の人生設計へとつながって行くのです。様々な講義を通じた教養教育を受けながら、自らが学ぶという姿勢を会得してください。

 札幌農学校では、先ほど述べた幅広い素養を身に付ける教育の実施だけではなく、「Be gentleman!」の一言を校則とし、学生の自律心、独立心を目覚めさせました。皆さんも「Gentleman」、現代版の「Ladies and Gentlemen」の意味を自ら追い求め、その答えを見いだしてください。北海道大学は、皆さんを一個の自律した人格として尊重し、敬意をもって接します。また、皆さんに対しても、そのような個人の自覚と責任を求めたいと思います。

 これから、様々なバックグラウンドや希望をもった仲間たちと共に修学します。そして広大で美しいキャンパスでは、講義はもとより、様々な行事、あるいは部活、サークル活動などを通じ、交流を深め、互いに切磋琢磨しあい、友情を育むことができます。 グローバル化が急速に進み、インターネットが世界の各地を一瞬で結び付ける現在にあっては、グローバルなフィールドで主体的に構想し、多様な人々の理解と共感を得ながら、問題解決や変革を主導できる人材が求められます。
 そのためには、英語を中心とする外国語によるコミュニケーション能力と異文化理解が欠かせません。北海道大学では、平成25年度から英語で学び異文化を理解する能力を身に付けることができる「新渡戸カレッジ」を開校しました。そこでは、海外留学を経験させて、グローバル社会で活躍できる人材を養成しています。
 皆さんには、この「新渡戸カレッジ」に積極的に参加し、海外の異なった考え方や価値観を理解し、グローバル人材として成長し、世界で活躍して欲しいと願います。未踏の地にその一歩を踏み出すこととなった皆さんに、札幌農学校のクラーク先生が残された「Boys, be Ambitious」を現代版に改めた「Girls and Boys, be Ambitious(少年・少女よ大志を抱け)」の言葉をお送り、私の告辞といたします。

  平成29年4月7日

                                                                                                     北海道大学総長 名和 豊春

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