平成24年度学士学位記授与式を迎えられた卒業生の皆さん、おめでとうございます。また、ご列席のご家族・関係者の皆様方に対しましても、北海道大学の全教職員を代表して、敬意を表しますとともに、心よりお慶び申し上げます。

北海道大学総長 佐伯 浩
本日、晴れて本学を巣立っていかれるのは、12学部合わせて2,539名です。このうち女子学生が27.2%で691名、留学生が21名です。留学生の皆さんにとりましては、環境も習慣も異なる異国の地での生活は大変であったろうと思います。無事卒業の日を迎えることができましたことを心より嬉しく思います。
さて、21世紀は知識基盤社会と言われています。特に資源も乏しく国土面積も狭い我が国にとって、現在の豊かさを維持するためには、科学技術と文化をさらに発展させることが極めて重要です。また、国際化と情報化社会への進展は、さらに加速するものと思われます。このような情況下で、世界の高等教育に関して、既存の北米を中心とする教育圏とともに、この十数年間で、新たにEU諸国を中心とした大きな教育圏が構築されつつあります。当然のことながら、日本、中国、韓国を中心とした東アジア教育圏の構築が急務となっています。
今後、世界の大学間の競争もますます激しさを増していくことが予想されます。
一方、グローバル化による社会構造の急激な変化と激しい国際競争の中で、バブル崩壊後の約20年間、日本型の市場経済システムは輝きを失いました。長期間の経済の低迷、人口の減少と高齢化の進行、いわゆる「失われた20年」に加えて、一昨年の東日本大震災による甚大な被害と、原子力発電所事故からの復旧、復興など、我が国は、多くの困難な課題を抱えています。
先行きの見えない閉塞感と、将来に対する不安感が我が国を覆っていて、若い皆さんにとっては、将来に向けての夢や希望を描きにくい社会情況であることはよく理解できます。しかし、この百年間ほどの歴史を振り返ってみると、我が国は、度々の大震災、大水害そして津波、高潮災害などに苦しんできました。第二次世界大戦では、数多くの都市が焦土と化しましたし、広島や長崎では、原子爆弾の投下により多くの人命が失われました。ここ五十年間でも、第一次・第二次の石油危機とそれによる物価の急騰という経済危機にも遭遇しました。しかしながら、国民一人ひとりの勤勉さや、粘り強い努力、家族の絆や思いやり、地域との連携などによって困難を克服し、その後の経済成長へと繋げました。しかし、時代の経過と共に、我が国の置かれている社会情況は、以前とは大きく異なってきています。国際化の進展、情報技術の発展は世界を大きく変えました。

昨年、現在の我が国の社会、経済情況から脱却することを目的に、産学協働人財育成円卓会議が開かれました。この円卓会議は、我が国を代表する企業20社の経営者と、本学を含めた12大学の学長で構成されており、「元気な日本復興・復活のために」をテーマに議論をいたしました。その結果、日本を牽引する人材として、2つのカテゴリーの人材養成が必要と結論づけられました。1つ目は、世界を舞台にリーダーシップを発揮して活躍できる「グローバル人材」の養成です。2つ目は、既成概念にとらわれないアイディアやモデルで「新たな価値」や「解」即ち、ソリューションを創出する「イノベーション人材」の養成です。この2つの切り口から議論し、「イノベーション人材」については、特に博士の人材養成に必要との結論に至りました。
我が国の将来を担う「グローバル人材」に求められる知識や能力などについては、次の6つを挙げています。第1にグローバルな世界を舞台に活躍できるタフネス、2つ目は、多様な民族・宗教・価値観・文化に対する理解や適応力、3つ目、日本人としてのアイデンティティーをベースにしたグローバルな感覚と視点、第4に、異質な集団の中で、自分の考えを適切に主張し、他者と協働し、能力を発揮できること、第5に主体的な思考力とリーダーシップ、そして6番目、高い語学力・コミュニケーション能力、などです。
我が国が、現在の低迷状態を脱し、新たな成長に向かって躍進することにより、将来に希望を持てるような国になることができます。今までの画一的な考えを変え、新たな発想の転換、即ち、日本の均質性や閉鎖性を打ち破る必要があるということです。そして、新たな価値の創造を可能とするために、先ほど述べた6つの知識や能力を持つ人材が必要となるのです。皆さんは、是非そのような人材を目指してください。
さて、皆さんの大多数が出席された4年前、2009年4月の入学式において、私は、北海道大学の4つの教育研究理念に基づき、皆さんを我が国のみならず、これからの世界を、勇気を持って先導していくような、国際性豊かで、人格に優れ、高邁な大志を持った人材に育てることを意図していると述べました。そのためには、幅広い知識を自ら獲得していく努力が必要なことと「自学自習」の習慣を身につけること、卒業を目的にするのではなく、学びや体験を通して自らの付加価値を高めることが重要であると語りました。また、国際化の進展により、英語によるコミュニケーション能力の向上が必要であること、さらに、留学生との交流を通して異文化への理解を深めて欲しいとも述べました。これらの私から皆さんへの希望は、円卓会議がグローバル人材にとって必要であるとした素養と、ほぼ一致していることがおわかりと思います。皆さんの中には、大学院に進学される方もたくさんいらっしゃると思います。是非、グローバル人材に求められる知識や能力を高める努力を続けていただきたいと思います。また、社会人になる方は、最初は仕事に慣れるのに、精一杯だと思いますが、常に自らに課題を課し「自学自習」により、自らを高める努力をして欲しいと思います。
本日、学位記授与式を迎えられた皆さんは、本学で身につけた知識や能力、さらには課外活動で得た経験、様々な思い出、そして、生涯の友となる友人など、かけがえのない宝物を得たことと思います。これからの人生を、夢と勇気、崇高なる大志、そして、グローバルな視点を持って歩んでください。
皆さんの前途に輝かしい未来が開けていくこと、その未来を皆さん自身が切り開いてくれることを信じています。
北海道大学も更なる国際化とアジアの拠点大学を目指して、積極的に挑戦していくことを約束して、告辞の結びとします。
平成25年3月25日
北海道大学総長 佐 伯 浩
