応用分子画像科学講座(大学院医学研究科協力講座)
【1】抗EFGR抗体(Cetuximab)を用いたがんの分子標的療法 〜 PETによる早期治療効果予測 〜
【3】チミジンホスホリラーゼを標的とした新規イメージング剤の開発 〜 分子プローブ開発研究 〜
【4】次世代イメージングシステムの構築および画質評価方法の開発
― 主なテーマ ―

【1】抗EFGR抗体(Cetuximab)を用いたがんの分子標的療法
~ PETによる早期治療効果予測 ~
上皮成長因子受容体(EGFR)を選択的に阻害するCetuximabの早期治療効果を、がん細胞を移植したマウスにおいて18F-fluorothymidine (18F-FLT)を用いるPETイメージングにより評価した。 すなわち、EGFRの発現が高いヒト肺癌細胞を移植したヌードマウスを用い、治療前及びcetuximab治療後に18F-FLT PET撮像を行った。その結果、腫瘍サイズに変化が見られない時点で18F-FLTの腫瘍集積は低下した(図)。すなわち、18F-FLT-PETにより、 Cetuximabの分子標的療法に対する腫瘍の反応を早期に検出できる可能性が示された。
近年、Cetuximabのように、がんの特定の分子を選択的に阻害する分子標的治療薬の開発が積極的に行われており、その有効性が期待されている。こ
れらの治療効果を、イメージング技術により早期に鋭敏に見極めることができれば、有効な治療は継続し、効果の乏しい治療は変更することが可能であり、臨床
上の意義は大きい。今回、動物でのイメージング研究において、PETによる治療効果評価の有用性を示すことができた。今後このような研究成果を臨床に繋
げ、患者にやさしい医療の実現に貢献していきたい。

【 論 文 発 表 】
1. Murakami M, Zhao S, Zhao Y, et al. Int J Oncol. 2012;41:1593-1600.
2. Takeuchi S, Zhao S, Kuge Y, et al. Oncol Rep. 2011;26:725-730.
【2】動脈硬化性病変(不安定プラーク)の画像診断法
〜 病態分析法の開発 〜
動脈硬化性病変の診断・評価においては、血管の動脈硬化病変の微細な形態変化をとらえると共に、その分子細胞機能情報から不安定で破綻しやすい病変(Vulnerable
plaque)を特定し、適確な治療方針を立てることが重要である。
動脈硬化病変の不安定性に関与する因子としては、アポトーシス及び炎症が重要であると考えられている。そこで、アポトーシスのマーカーである99mTc-annexin A5 (99mTc-Ax 5)、及び炎症に高く集積する18F-FDG(14C-FDG)の動脈硬化病変への集積を、モデルマウス(apoE-/-マウス)を用いて詳細に検討した。その結果、99mTc-Ax 5、FDG集積はマクロファージ浸潤度と正の相関を示したが、進行病変(AHA, type V)ではマクロファージ浸潤の減少による両トレーサー集積の減少が観察された(図)。このことから、99mTc-Ax 5及びFDGは活性な動脈硬化病変に集積し、不安定な病変を検出できる可能性が示された。
非侵襲的画像診断法の中で、CT、MRIや超音波検査は動脈硬化病変の検出に優れている。他方PETを主体とした核医学検査は、上記検討結果が示すよう
に代謝や分子情報など血流や機能を越えた情報を映像化でき、動脈硬化病変の性状を把握するのに役立つ。PET/CTを活用することで形態情報と機能情報を
融合して統合的に評価することも可能となる。今後、基礎的検討と共に臨床症例での検討を通して、動脈硬化の機能画像情報の有効性が示していきたい。

【 論 文 発 表 】
1. Zhao Y, Zhao S, Kuge Y, et al. Mol Imaging Biol. 2011;13:712-720.
2. Zhao Y, Kuge Y, Zhao S, et al.J Nucl Med. 2008;49: 1707-1714.
【3】チミジンホスホリラーゼを標的とした新規イメージング剤の開発
〜 分子プローブ開発研究 〜
多くの腫瘍組織には、対照正常組織に比べて、高濃度に発現する分子の存在が知られており、これががんの形成、増殖、転移などに関与することが示されている。このなかで腫瘍に高レベルに発現する酵素の一つであるチミジンホスホリラーゼ(TP)は、チミジンをチミンと2-デオキシリボース-1-リン酸へ可逆的な変換を触媒する酵素であるが、血管新生因子の一つである血小板由来血管内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)と同一タンパク質であることが明らかにされた。
TP/ PD-ECGFの酵素活性は、がんの血管新生のみならず、浸潤、転移を引き起こすため、その発現はがんの悪性度と深くかかわっていることが明らかにされて
いる。そこで、TP/ PD-ECGFを標的とした新しいイメージング剤(11C、123I、18F標識TPI)を開発し、臨床への展開・事業化を目指している。そのなかで新規に開発したウラシルを母体骨格とする123I-標識TPIは、TPを発現する腫瘍に特異的に集積した(図)。すなわち、TP発現に応じた集積を示す新しい集積機序を持つ腫瘍イメージング剤の開発の可能性が示された。
本イメージング剤の開発により、早期の腫瘍鑑別診断のみならず、病期の把握、悪性度診断、治療効果の予測、判定、治療方針の決定、予後の推定などに有用な情報を得ることが期待される。今後、さらなる基礎検討をもとに臨床研究へ展開し放射性標識TPIの有用性を示していきたい。

【 論 文 発 表 】
1. Li H, Zhao S, Jin Y, et al.: Nucl Med Commun. 2011; 32: 1211-1215.
2. Akizawa H, Zhao S, Takahashi M, et al.: Nucl Med Biol. 2010; 37: 427-432.
3. Takahashi M, Seki K, Nishijima K, et al.: J Label Compd Radiopharm.
2008; 51: 384?387.
4. Takahashi M, Seki K, Nishijima K, et al.: Heterocycles. 2008; 76: 237-241.
【4】次世代イメージングシステムの構築および画質評価方法の開発
放射線のイメージング技術は放射線量および同位体分布を把握することができ非常に重要である。次世代のデバイスとして半導体素子に代表される区画化された素子を配列するイメージング装置が存在する。われわれは既に半導体素子で構成されたガンマカメラによるSPECTシステムを構築し検討を行っている。このSPECTシステムに従来型コリメータを装着した場合、偽像(artifact)が発生した。
そこで新しいコリメータをデザインし作製・応用することで、この偽像を発生させないことに成功した。またこのSPECTシステムは1.3 mmの間隙も描出し、空間分解能は良好であった。
区画化された素子を配列するイメージングデバイスでは、その機構により特有の現象が発生する。点線源が理想的な微小な大きさであったとしても必ず1画素の大きさには広がってしまう。この効果は開口効果あるいはアパーチャ効果(aperture
effect)と呼ばれる。点が広がるということは空間分解能の劣化であり、このことでも細かい構造を見ることは出来なくなる。また、点線源の位置が画素の辺になると複数の画素にまたがる場合がある。これはシフトアライメント(shift
alignment)と呼ばれる。そのため区画化素子配列イメージングデバイスでは位置不変性が成り立たず画像内の場所によって暈けの程度は若干違ってくる。この現象に対処した画質評価法を、科学研究費萌芽研究・課題番号15659274「次世代核医学デジタルイメージング装置における新しい空間分解能評価法の開発」として検討も行っている。



【 論 文 発 表 】
1. Magota K, Kubo N, Kuge Y, et al.: Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2011;38:742-752.
2. Shiga T, Morimoto Y, Kubo N, et al.: J Nucl Med. 2009;50:148-155.
3. Kubo N, Zhao S, Fujiki Y, et al.: Ann Nucl Med. 2005;19:633-639.
〒060-0815
北海道札幌市北区北15条西7丁目
TEL:011-706-6088(管理室)
TEL:011-706-6087(事務室)
FAX:011-706-7862