【卒業生インタビュー「同窓異曲」】

TRIBE TOKYO MMA所属 総合格闘家
後藤 丈治
GOTO Joji
| 経済学部卒業 |



心技体を備えた"本物"の格闘家を目指す
〜文武両道、原動力は好奇心〜


東京で総合格闘技(パンチ、キック、寝技等を用いて対戦する競技)のプロとして世界での活躍を目指しながら、人材コンサルタント会社で働いている後藤丈治さん。学生時代の思い出や総合格闘技の魅力、民間企業での勤務という「二足のわらじ」を実践することになったいきさつについて語っていただいた。


―総合格闘家になったいきさつは。

 小学生のころから空手をやっていました。高校2年生のときに区民体育館で総合格闘技の練習を見ていて、面白そうだったので「自分もやってみたい」と声をかけたのが初めての出会いです。その後、大学生時代に「プロでやってみないか」というお話をいただき、プロ選手がいるジムに所属して練習をするようになりました。


―総合格闘技の魅力と、現在の目標は何ですか。

 決して大衆受けはしませんが、何よりも感情移入できる競技だと思っています。命がけで、―実際に普通のボクシングや空手よりも危険でケガも多いのですが―勝つか負けるか、生きるか死ぬかを乗り越えるところに魅力があります。

 僕は自分が死んだ後でも人々の記憶に残る試合をしたいという大きな目標を持っています。会場にいる何万人という観衆の一人でも良いので、心に突き刺さるような試合ができればと思っています。

 現在は、総合格闘技「修斗」の環太平洋ランキング2位にいるので、年内に国内のチャンピオンを狙いにいきたいです。


―北大を志望した動機は。

 高校時代は総合格闘技が生活のほとんどでした(笑)。受験に失敗した後、予備校に通い始め、その時に、倫理・政治経済担当の先生から初めて勉強の楽しさを教えてもらい、そこから勉強にのめり込みました。ずっと勉強していましたが、予備校時代は楽しかったという思い出しかないですね。そこで経済をはじめとして、世の中の仕組みに興味を持つようになりました。どうせなら北海道で一番といわれている大学に行きたいと。


―学生時代はどのように過ごしていたのですか。

 ほとんど総合格闘技をしていました。大きな思い出は1年生の大学祭と学部のゼミです。あとはアルバイト。トレーニングや遠征に必要な費用を稼ぐために、家庭教師やレストランのホールスタッフなどあらゆる職種をこなしましたね。


―カナダに行って苦労したそうですね。

 ある試合で知り合った人に「強くなりたかったらカナダに来なよ」と言われ、航空券代だけ貯めて行きました。モントリオールに世界ナンバーワンといわれるコーチがいるジムがあったのです。

 ところが頼りにしていた人が現地におらず、携帯も使えず、お金にも困る状態で、1カ月間ジムでトレーニングをしました。同じ寮にはプロを目指す選手もいて、彼らの活躍が刺激になりました。世界中から入門を熱望する若者が集まり、共通言語は格闘技でした。何もない場所に自分で飛び込めるのだという自信と経験を得ることができましたね。

 うちのジムの選手は海外志向が強いです。僕も日本以外に強い選手がいるなら、彼らと渡り合えるぐらい強くなりたいと思っています。


―なぜ民間企業に勤務しているのですか。

 人々の記憶に残る試合ができるような本物の格闘家を目指すという大きな目標が、経済的に不安定な状態によってブレてしまうことを恐れました。金銭面の不安がなければ理想の総合格闘技を思いっきりできると。

 現在は人材コンサルタント会社で、求職者の可能性を引き出すための支援や、企業とのマッチングなどを行っています。会社はしっかりと仕事をしていれば、格闘家との両立を理解してくれています。練習のない時間帯に働き、リモート形式での意思疎通も可能です。

 実は、人材支援のビジネスと総合格闘技は相乗効果があるのです。求職者の適性や潜在能力を考えることが、格闘技での対戦相手の強みや弱みを考えるところと表裏一体で、関連しています。できないことをできるようにする課題解決という点でも共通していますね。


―練習や仕事の合間にはどうしているのですか。

 ジムの先輩の影響もあり、坂口安吾の『堕落論』を愛読しています。三島由紀夫の『金閣寺』も好きですね。その時代が当たり前としている風潮を疑い、問い直す人にあこがれを持っています。音楽では矢沢永吉(ロックシンガー)も気に入っています。

 サウナも大好きです。札幌の銭湯は全部行きましたし、昨年は沖縄県まで入りに行きました。リフレッシュするという快楽だけではなく、誰とでもつながれる時代に誰とでもつながれない環境も気に入っています。


―最後に北大生に一言お願いします。

 自分が後悔していることですが、今の仲間づくりをすごく大事にしてほしいですね。また、格闘技や仕事としてアウトプットする立場になって初めて、もっとしっかり勉強しておけばよかったと実感しています。いろいろな選択肢にチャレンジしてほしいです。


PROFILE

1996年北海道出身。2019年に北海道大学経済学部を卒業し東京へ。人材コンサルタント会社に勤めながら、総合格闘技(MMA)ジム「TRIBE TOKYO M.M.A」に通い、トッププロらと練習に励む。2020年9月に総合格闘技「修斗」でプロデビューを果たし、現在はバンダム級世界5位にランクインしている。



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