高校までの「勉強」と大学の「学問」はどこが違うでしょう?高校で履修する各科目の扱う範囲は文部科学省で決められています。大学入試問題はこの範囲内でしか作れません。大学の入試はある期間勉強すればよく出来るようになるのは当然です。まして、ヤマをかけてくれる学校や指導者までいます。皆さんはこの条件の範囲で選抜され、本学で学ぶ機会に恵まれただけだと自覚してください。
 大学では“確立された学問体系(以下基礎科目と呼びます)”と、これら基礎科目に基づいて世界中で創ろうとしている新しい学問体系を学びます。この学びの過程は、まずは基礎科目から始まります。これら基礎科目を学ぶことは世界の大学で行われていますから、標準的な教科書が沢山あります。ある学問体系を学ぶ(=学問する)意欲があれば基礎科目は独学できます。それでも、大学で講義があるのは、先生がその学問体系をどう理解しているか(つまり、ヤマ)を学生に示し、学生のヤマのかけ方をチェックするためと言えます。
このヤマの捉え方をめぐっての学生と先生との対話が講義です。基礎科目の理解のために要する予備知識は学生によって差があるので、学生は予習・復習して自分で差を埋めますし、それでも解らなければ質問していいのです。
 平成14年度に出版された本学の学生生活実態調査によると、平均の一日の自習時間が1時間以内という学生(学部全学年)が45.7%というのは非常に心配です。授業の出席だけで単位を与えよとか、卒業資格を得るため試験さえパスすればいい等の甘えが感じられます。大学の卒業証書は、専門技術や資格の証明書ではありません。ある専門分野において関連する基礎科目を理解したので、これらに基づいてその分野を創っていく資格がある、というライセンスです。
 私を含めた講義をする側の先生の殆どは、自分が学生の時に講義だけでは基礎科目は理解できなかったという体験があります。自分で復習して身につけたと実感していますから、皆さんの予習・復習は当然のことと思っています。講義の1単位は、1時間(実際は45分)の授業15回の履修で与えられ、1時間の講義には予習、復習各1時間が前提とされています。全学教育の時間割は全てを埋める必要はありません。授業のない時間に予習復習ができるように、本学は図書館本館及び北分館の整備をし、更に昨年の改修では自習室、学生の溜まり場等を作りました。
 大学受験勉強と違って、学問に終わりはありません。学問は一生かけて深めるものです。勿論、独りで時間を多くかけるだけで深まるわけではありません。この際に、先生、先輩、同級生の存在が大事になります。本学はこの環境においては、わが国でも恵まれた大学の一つです。私の年になりますと、評価の高い仕事をした人が、如何にして学生時代以来よく学問を深めたかの例を沢山知っています。社会に出ると、学生時代のような学問する環境は無くなります。皆さんはこの恵まれた機会を無駄にすることなく、自分で「学問」を開始して下さい。




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