環境省 やんばる野生生物保護センター
自然保護専門員
小高 信彦
ソーキそば,ゴーヤチャンプルー,タコライス。島唄,三線,涙そうそう。オリオンビールに泡盛。 近所の子供たちは僕のことを「こたかのにぃにぃ」と呼んでくれる。札幌市よりも少ない人口約135万人の沖縄県には,料理,芸能,酒,言葉,どれをとってもそれと聞けば沖縄だ!と思い浮かぶ独特の文化があります。文化だけではありません。僕が暮らしている沖縄本島北部の「やんばる」と呼ばれる地域には,今でもイタジイの優占する亜熱帯照葉樹林が広がり,ノグチゲラ,ヤンバルクイナ,ヤンバルテナガコガネなど,世界でもここだけに しか生息していない固有の生き物たちが見られます。
クロイワトカゲモドキ
その独自の自然とそこに暮らす野生生物の保護,それが今の僕の仕事です。
京都生まれ,大阪育ちの僕にとって,平成元年に北大に入学したときも,その自然の素晴らしさに感動したものです。劇的な四季の移り変わり,特に4月下旬から6月上旬にかけて, 林床にはエゾエンゴサクやニリンソウが咲き,見上げればキタコブシが鮮やかな白い花をつける。
ノグチゲラ
(国の特別天然記念物)
子育て中のアカゲラ
(北大キャンパス)
そして木々が一気に展葉する。丁度その頃,コツコツとキツツキが子育てのために巣穴を掘る音が聞こえてくる。 何も自然を求めて遠くまで出かけなくても,北大キャンパスは四季折々に様々な美しい顔を見せてくれました。学部時代は「北大野鳥研究会」とラグビーの「エンレイクラブ」に入部し, 充実した4年間を過ごしました。学部を卒業した平成5年,この年できたばかりの北大大学院地球環境科学研究科に進学し,小学生の頃から好きだったキツツキを材料に「人と自然の関わり」, 特に「森林の分断化」をテーマに研究を始めました。子供の頃から好きだったキツツキを研究材料にすることに,はじめは抵抗があったのですが,研究を始めてみるとこれまで一夫一妻と考えられていた アカゲラで,一妻二夫で繁殖するトリオを世界で初めて北大の原生林で発見するなど学位を取得するまでにも次々と興味深い発見がありました。そして,今はそのキツツキを追いかけることが仕事になりました。
今僕は環境省の「やんばる野生生物保護センター」で自然保護専門員として, ノグチゲラの保護増殖事業を中心に基礎的な生態研究や普及啓発活動などを行っています。ノグチゲラは,国の特別天然記念物で,日本産のトキ亡き今,日本で最も絶滅が 心配される鳥の一つです。この仕事は「終身雇用ではない」ので,ずっと続けられるわけではありません。とはいえ,子供の頃夢見たような仕事を今現場でやっているわけですから, やる気が出ないわけがありません。きっちり仕事をやりながら,業績も上げて次の道を模索しているところです。就職難で大変なご時世ですが,最近あまりにも夢の無い言葉ばかりを耳にします。 世の中は確かに厳しいし,安定計算を考え出したら悩んでしまう時もあります。それでもあえて,一度きりの人生,やりたいことにこだわって 一生懸命やるのも道ではないかと思います。支えてくれる家族や友人,同僚やご近所さんに感謝しながら,今後も頑張っていこうと思います。
大変なこともありますが,現役北大生の皆様,お互いにがんばりましょう!
ラワンブキを思わせる
クワズイモの下で