ISO9000(品質に関する国際規格),ISO14000(環境管理に関する国際規格)といえば,グローバルスタンダードという言葉とともにマスコミなどでもたびたび取り上げられていますが,安全についてもさまざまな国際規格が定められています。なかでも最近発効されたISO12100(機械類の安全性−基本概念,設計のための一般原則)は,先のISO9000やISO14000と同様に産業界に大きな影響を及ぼすものとして注目されています。
ISO12100は機械安全に関する膨大な規格類の頂点に立つ規格であり,安全の基本概念やリスク低減の標準的な方法などが規定されています。例えば「安全」の概念は次のように定義されています。
安全:許容できない
リスクが無いこと。
リスク
:危険状態において人体が物理的傷害や健康障害を受ける確率とその被害の程度の組み合わせ(つまり確率が高くても被害の程度が小さければリスクは小さいと考えられる)。ここでは絶対安全を前提とはせず,リスク低減のための方策が講じられた後に多少のリスクが残ることを認めています。
残留リスクが許容可能であるかどうかは
,その時代における社会の価値観や技術水準などを考慮して判断されるべきものとしており,その評価については合理的な説明が求められています。
また,安全のために階層的実現方法が主張されています。すなわち,設計で安全を確保するのが第一であって,さらに機械自体のリスク低減では不十分な場合の安全防護(安全が確保されない場合は(「危険な場合は」ではない!) 機械に近づけないようにする(隔離による安全防護),機械を停止する(停止による安全防護),など)を施し,その上で残ったリスクについての情報を指示事項や警告としてユーザー(管理者と使用者)に伝えることが義務付けられています。機械メーカーはこの規格をクリアしないと、海外への製品の輸出ができないことになります。これは,設計では機能とコストを重視し,安全については現場の教育と訓練が重視されていたこれまでの考え方と大きく異なるものです。
このように本規格は安全に対する製造者の責任を重視していますが,それによってリスクが零になるわけではありません。機械のユーザーが安全管理や訓練,個人的防護設備などの対策を怠ってはならないのは言うまでもありません。
安全対策専門委員会
「安全教育・安全マニュアル班」