日本周辺は「地震の巣」と言われるくらい地震多発地帯である。北海道周辺も例外ではなく，記憶に新しいところで平成５年の北海道南西沖地震そして昨年９月の釧路沖地震が挙げられる。昨年の「釧路沖地震」においては北海道大学でも研究科の建物によっては内壁に亀裂が入るほどの規模であった。当然のことながら，研究室内の悲惨な状態は想像を絶するものであった。机の横に設置された書庫の書類や文献は散乱し，細胞培養するCO2インキュベーター内でdishから培養液が溢れ出ているし，収納棚内のガラス器具はほとんど倒れて沢山のメスシリンダーやビーカーなどが倒れて割れたガラスが辺りに飛び散っている。２段重ねの書庫は上・下段が３０cm程ずれていて，もしもう少し激しく揺れていれば落下のおそれもあった。今後もこれ以上の規模の地震が発生する可能性は高く，日頃から対処しておくことが肝要である。 　 　 国立大学はどこでも同様であるということを耳にするが，研究室内や廊下に所狭しと測定機械，ガスボンベ，保管棚，冷凍庫やロッカーが並べられいざとなった時の避難経路なども十分に確保されていない状況である。また，実験の円滑な実行のために仕方ない面もあるが，試薬類の保管場所などに関しても安全面はあまり考慮されていないケースも多々あった。安全対策という点で国立大学は今まで「人事院規則」に基づいて比較的寛容な扱いを受けてきたと思われる。しかし，この４月からの国立大学法人化に伴い，我々の研究活動に対して「労働安全衛生法」，「消防法」，「毒物及び劇物取締法」などが厳密に適用され，私立大学や一般企業と同様の扱いを受けることになる。これらの法律に抵触すれば，刑事責任を問われることとなる。処罰されるから注意するのではなく，自ら身の安全を確保することが重要である。例えば現在，廊下に設置してあるものをすべて研究室内に保管するとすれば，床面積は限られているので通路巾を８０cmを確保するためには「高     層化」するしか道はなくなる。「高層化」とは言っても棚の上にものを置くような方法は大きな地震の場合には大変危険である。 棚や試薬庫の固定，試薬転倒防止のための仕切の設置など「高層化」に対処するばかりでなく，廃液入れの密栓，転倒防止，ガスボンベの上下２カ所の固定など地震対策も強化する必要がある。     安全対策専門委員会 「安全教育・安全マニュアル班」