東京地方裁判所 判事補 萩原 孝基 |
![]() |
||||||
1 はじめに | |||||||
札幌は,いま,まさに厳寒の候でしょう。学生の皆さんは,まだ遠い春に思いを致しているのでしょうか。 |
|||||||
2 いまの仕事 | |||||||
私は,民事第34部で,民事合議事件(裁判長・右陪席裁判官・左陪席裁判官の3名で構成される合議体で審理する事件)の左陪席裁判官として事件を担当しています。現在は,前任者から引き継いだ事件の分厚い記録を検討し,訴訟の進行や事件の見通しなどについて裁判長や右陪席と合議(話合い)をしたり,法廷などで争点整理や証人尋問をしたりしています。 と,書くと,すらすら仕事をこなしているかのようですが,それは間違い。やっとのことで仕事の要領がつかめてきた段階です。私のような人間は,とにかく,努力あるのみだなあと日々実感しています。そんな私ですから,毎日どっと疲れています。また,法廷で,当事者や傍聴人から注目されるのを感じるたび,職責の重さを感じます。けれども,仕事への充実感とやりがいを大いに感じます。 けれども,裁判官(判事・判事補)の印象は一般的に薄いですね。ドラマなどでは検察官(検事)や弁護士が注目されるので,裁判官は地味でつまらないように思えるかもしれません。確かに,裁判官の仕事は,検察官や弁護士に比べれば,多分に静的でありましょう。しかし,事件について考えに考え抜き,合議するという仕事は,身体の動きとしては静的でも,頭の中では非常に「動的」です。知的興奮を覚えること,間違いありません。興味をもって,ぜひめざしていただきたいと思いますし,また,めざすつもりがなくても,一度,法廷傍聴に行かれることを強くお勧めします。 |
|||||||
3 いまの基礎を築いた時代 | |||||||
このように,私は,判事補になりましたが,それも,教授方からの多大なご指導なしには実現しませんでした。 法学部の教授方は,とにかくご親切でいらっしゃいました。私は,教授方から,法律を学ぶ上で何が肝要であるかを,有形無形にお教えいただきました。質問とそれに引き続く議論をとおして,私の法的素養は涵養されたと言えます。また,(情けないことに)怠け者の私に対して,教授からいろいろと発破をかけてくださったことにも,感謝しております。 また,私が学部生だった当時,客員教授として派遣されていた札幌地方裁判所の裁判官と交流させていただいたことも,私の進路を決める上で影響したことは言うまでもありません。 さらに,議論をしたり,愚痴をこぼしあった友人の存在も,非常に貴重でした。 |
|||||||
4 おわりに | |||||||
北大は,物的に,広い敷地の中に緑があふれ,学問をするのに最適の環境にあることは,勿論お気づきのことでしょう。しかし,北大は,さきほど述べたように,人的にも学問をするのに最適の環境です。皆さんも,教授のみならず,先輩・後輩との議論や交流(飲み会?)をとおして,学問的素養を陶冶し,仲間を増やしてください。私的には,友人の部屋で,酒を飲みつつ,夜を徹していろいろと語り合ったことが懐かしく思い出されます。 それでは,この環境を最大限に活かして各人がお持ちの目標を達成されることを心より祈念して,筆を擱きます。 |
|||||||
大学院法学研究科 http://www.juris.hokudai.ac.jp/index_j.htm |