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札幌医科大学
保健医療学部理学療法学科助教授
田中 敏明 |
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1984年に北大医療技術短期大学部(現、医学部保健学科理学療法学専攻)を卒業しまして早20年以上の月日がたちました。私は現在,札幌医科大学保健医療学部理学療法学科で教鞭をとっています。
大学時代は北大に北海道で初めての理学療法士,作業療法士の養成が行われるということで何か新しい分野を切り開くことに対する情熱と意気込みが先生方そして学生にもありました。その頃はリハビリテーション,理学療法士(PT),作業療法士(OT)という言葉も世間に十分認知されていない状況で,逆にそれが我々の開拓精神の原動力になったかと思います。まさに北大の建学精神に通じるものがありました。大学時代はかなりきついカリキュラムでしたので講義,実習で大変だったという思い出ばかりです。
卒業後,札幌医科大学附属病院に理学療法士として勤務したのですが,ここでもPT,OTはまだまだ理解されていませんでした。このため,患者さんに対して自分なりのベストを尽くして,自分の治療技術を向上させ周囲に認めていただくことをきっと私だけでなく同期も後輩も考えていたかと思います。大学病院勤務ということで臨床のなかで積極的に研究もしなければならない環境でした。当時,研究法などの講義を受けたこともなく,先輩方も同様の状況でしたので,苦労して研究を続けました。このとき,支援していただいたのは母校北大の恩師の先生方でした。医学,理学療法学,統計学などに関して研究者としても医療従事者としても未熟な私を暖かく支えていただきました。
臨床経験を積む中で,PTのアイデンティティーに関する疑問,自分の治療・研究の限界を打破したく,日本に大学院がないため,理学療法学の先進国であり,かつ,病態運動学研究で有名なニューヨーク大学大学院への留学を決意しました。ただ当時は医師や教員ではない医療職には留学制度がなく,病院を退職しなければならず悩みました。この時もやはり恩師の励ましが大きな弾みになりました。この留学時代の勉強,友人,教官とのいろいろな経験が今の私を支えてくれています。修士号を取得後帰国し,次に学位取得を考慮した時点でも,私の研究テーマに近い福祉工学領域を専門とする北大電子科学研究所の伊福部教授(現,東京大学)を紹介していただき学位取得できたことも恩師のご紹介があればこそでした。
このように私の人生の分岐点での恩師の励まし,支援を含め北大の懐の深さ,柔軟性,寛容さに感謝しております。今,自分が教育者として恩師が私にしてくれたように学生に接しているかということははなはだ疑問ですが,いつかは恩師の域に近づき,後輩,学生をサポートしていきたいと思っております。
我々の分野も医療業務として重要な役割を担うために,日本においても4年制,大学院が急激に増えています。北大でも我が後輩がこの変化に対応して科学と技術の融合において素晴らしい成果をあげてくれることを期待しています。北大は総合大学として様々な人材がおられ,豊富な研究テーマへの多様な研究者のジョイントが可能です。ぜひ医療分野においても異分野の研究者,院生,学部生が参加し,健康科学,治療学などのテーマに取り組み,患者さん,道民,国民への貢献が可能な科学,技術の発展に尽くしていただきたいと思います。それができるのが北大だと信じております。 |
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