もしも、社にスタバを創ったら


 本誌について、「そんな広報誌があることは知っていたけど読んだことはない・・・。」など、現 状は、ちょっと知名度の低い「えるむ」ですが、少しでも皆さんの手にとってもらえるように、 今号から新たな企画を立ち上げました。
  その第一弾は、「学生参加型連載企画」。皆さんに参加してもらってユニークな発想を期待する企画です。
  例えば「大学の垣根を取り払って、そこに幅広い層の人たちが利用できるCafeを創ったら、そこでどんなことが期待できるのか。」など、学生の視点から取り組むプロジェクトを企画してもらい、一緒に考えられる「場」を作りました。
  本企画が、やがては形態を変えつつも、学生の支援に資する有効な「場」となるきっかけになれば幸いです。
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序章
  「珈琲」と聞くだけで、何処か心が寛ぐような気持ちになる人は多いだろう。それは「レモン」と聞いて口の中がすっぱくなるのと同じかな…。先日、スーパーの書店で立ち読みをしていると、世界ブランドのCafeが紹介されている雑誌を見つけた。その店のセールス・ポイントは、スタッフの笑顔と「ホスピタリティ・・・・・・・」。ホスピタルと似ているその言葉は、「心のこもったおもてなし」と訳すようだ。誌面に掲載されている満面の笑顔を見ながら、何処からか珈琲のいい匂いが漂ってきそうな感覚を味わっているうちに、ふと、ある事に気がついた。こんな笑顔を何処かで見かけたことがある…。それは北大の学生達だ。いや、何処か商業的な笑みに見える他方に比して、北大生の笑顔は正真正銘、心の内から輝いている。スタッフの笑顔と心配りを求めてCafeに通う人がいるのなら、いっそのこと正真正銘の笑顔を見に来てもらったらどうだろう。

予算の縮減と自己努力
 国立大学法人化後、大学の予算が毎年1%削られるという話を耳にした人は多いかもしれない。いわゆる人件費や運営経費の支えとなる「運営費交付金」が毎年削減されていくというものだ。そうした中で大学は、特色ある教育や研究を行って競争的資金や外部資金を獲得し、何とか家計・・のやりくりをしていかなければならない。一方、法人化後は、大学も自由度が増し、大学グッズを売り出したり、地域の老舗などとタイアップして大学ブランドのお菓子を売り出し、売り上げの数%を大学の収入に繰り入れたりしている。北大でも入学式などには、「札幌農学校」というクッキーが大好評となったり、台風で倒れたポプラの廃材を生かした高価なオルゴールが人気商品になっているようだ。

自分たちのCafeを
 そして、最近耳にするのが大学構内や大学病院に有名Cafeがオープンしていることだ。一昔前なら、「構内にマックやスタバがあったらいいのに」と叶わぬ夢を描いていた。しかし、既に現実化されてしまった今日では、売り上げの数%を収入源とするだけでは何かつまらない。寛ぎの空間を大学側の自由にできる訳でもないだろう。もし、大学が自分たちでCafeを創ったら、そこで何かできるかもしれない。学生支援につながり、地域等との交流が広まり、収入源にもなるような斬新的な事業がはたして現実的に可能か否か…。普段は、対面的な関係になりがちな学生と学生支援組織が、時には同じ方向を見て、一緒に考える機会があったら、どんなに心が充たされるだろうか…。そんなことを買い物に付き合わされながら思いふけったのが、今回の企画を思い立った発端だった。

懐古
 昔、地域と大学は共に栄えてきました。大学周辺には学生や職員を相手にいろいろなお店があり、北大生を暖かく見守ってくれる人たちがたくさんいました。食堂、商店、喫茶店、麻雀荘、理髪店、古本屋、そして銭湯や映画館もあったようです。遠方から入学してきた学生たちにとっては、時には叱られ、でも大方は笑い飛ばしてくれる、その店のオジサンやオバサンたちが大好きで、札幌の父親であり母親とも思える存在でした。いつしか、時代の変遷とともに、そのような方々がエルム街からどんどん少なくなっていきました。息子さんたちとの世代交代もままならず、廃業したり、立ち退かされて、跡地がビルやマンションに替わりました。そして周辺には、東京にも、九州にも、何処に行ってもあるような店ばかりが立ち並びました。こうして、大学と周辺に住んでいる方たちとの関係は、どんどん疎遠になっていきました。近隣住民が感じる北大生のイメージは、「ちょっと頭が良いだけ、自転車の運転マナーなんか高校生より悪い、酔ってわめいて、集団になったら怖いものなし、一人になったら何もできないのに」。このイメージは当たっているのでしょうか。悲しいかな半分くらいはそうかもしれません。若者特有の照れくささがあって、皆の前では優等生になりたくない面もあるのでしょう。しかし、実際に窓口で対面していると、ほとんどの学生は、素直で純粋で、小さい頃からコツコツと頑張ってきたんだろうなあと思わせる人たちも多いのです。

一緒に考えよう
 今回の構想企画は、構内にCafeを創り、学生がスタッフとなって「ホスピタリティ」を身に付けながら、地域の人たちなどと交流できる場を設けること、また、主に文系サークルの芸術や研究活動の発表の場を提供し、学生が自己表現できる場を設けること、その二つを主体に考えました。言わば、北大のイメージショップとでも言うのでしょうか。学生の皆さんに協力してもらって、構想を練ってもらいたいことは次の事柄です。

 (1)学生支援の観点から期待される効果及び問題点
 (2)経営的な側面から危惧される問題点及び実現性
 (3)設置目的以外に期待される効果

 思いやりや心配りのできる人間になることは、これから社会に巣立つ学生にとって、とても有益なことで、大学ではなかなか教えられないものです。スタッフとして考えられるのは、学業・心身ともに申し分なく、当然ながら、時間割に空きコマがある人でなければいけませんが、このような優秀な学生には、奨学的な意味合いを込めて、十分な時給を支給し、ステータスになるような存在としてはどうでしょうか。課外活動などの発表の場としては、音楽系の弾き語りから、寄席、演舞、そして研究成果などの発表を想定しています。昨今、珈琲を飲みながら、気軽に科学の話をするといったイベントなども開かれているようなので、このようなスポットがあればきっと幅広く利活用できるのではないでしょうか。。
 経営面では、はたしてお客様がどのくらい来店してくれるのかという問題です。夏場の観光シーズンならまだしも、冬場はちょっと不安です。近年、周辺には高層マンションが増えたりもしていますが、都心の喧騒から逃れて来店してくれる方たちはいるのでしょうか。そんな不安をマーケティングで検証したりするのも、その時点で、地域と交流ができることになりますね。
大学は、教育と研究を通じて、人と人とが触れ合うことがベースになっていると思います。時には、気軽なスポットを利用して、学内と学外の人たちが交流できる場があればと考えました。例えば、年に数回、総長や部局長の一日店長などといったイベントがあったら、北大をより身近に感じてもらえる良い機会になるとともに、より「収入が増え、学生に還元でき、交流が深まる」という相乗効果的な循環を生むことが可能ではないでしょうか。

検討過程を連載
 この企画は、あくまでも「えるむ」の中だけの構想企画であり、大学が公式にCafeを設置することを検討しようとしている訳ではありません。いまのところは、まったく空想段階と言わざるを得ませんが、我々の検討如何によっては、現実的な場での検討に発展する可能性はあると考えています。そこで、企画や経営、マーケティングから、建築、美術、サービス面などの分野に興味のある人、またはCafeでバイトしたことのある人など、一緒に考えてもらえる方を求めています。今後は、検討経過を「えるむ」に連載しながら、少しずつ形にしていきたいと考えています。参加希望の方は、8月から9月を目途に高等教育機能開発総合センター2番窓口か次のアドレス宛に連絡してください。

Mail:g-sodan@academic.hokudai.ac.jp




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