水曜日の夜8時。研究やアルバイトに忙しくて、家でテレビを観ている人は少ないかもしれませんが一度、この時間、NHKをかけてみてください。超面白くて、そして、とっても役に立つ番組がオンエアされています。その名も『ためしてガッテン』!様々なテーマに、科学的視点で迫り、何かを『ためして』、そして『ガッテン(納得)』してもらおうという、私が制作を担当している科学番組です。
私が北大を修了したのは6年前。何かを調べて、伝える仕事がしたいと、現在の職を選びました。しかし、ディレクターという仕事は、なかなか大変です。企画から始まり、取材、ロケ、編集、スタジオ収録など、色々な人たちの力を借りながら番組はできていくのですが、各段階でこれでもかというぐらい問題が発生し、家に帰れない日々が続きます。その分、完成したときの達成感は他の仕事では味わえないほど大きいものだと思います。今回は、その中で学んだことを紹介します。
現在、担当している『ためしてガッテン』のウリは、その名の通り『試す』こと。できるだけ、面白く、でも、とってもふか〜いことを実験するんです。ところが、この『試す』のが、うまくいかないケースが、けっこうあるんです。想定では、勝つと考えていた方が実際にロケすると負けてしまったり。思い通りの数値がでなかったり。ディレクターにしてみると大ピンチ!だからと言って、もちろん結果をねつ造することはできません。
今年2月、『お年寄りはどのように交通事故を起こすのか』という番組を作りました。実験は、教習所でお年寄りのドライバーに正面のランプがついたらブレーキを踏んでもらい、その反応時間を調べるというものです。年をとると、複数のことを同時に行うのが苦手になります。そのため、信号、対向車、歩行者、など様々なものに注意を払わなければいけない交差点などでは、高齢者は事故を起こしやすいのです。そこで、私が考えた実験は、参加者には内容を告げず、助手席に応援に呼んだレースクイーンを座らせます。そして、ランプがつきブレーキを踏む直前に、『初恋はいつですか?』など恋愛話を話しかけてもらうのです。『運転』以外に、突然、『会話』という処理を行わなければいけなくなり、結果が悪くなると考えたのです。
ところが、実際にやってみると、一人、結果が良くなったお年寄りがいたのです。これでは、番組のストーリーが成立しません。教習所を貸し切り、たくさんのエキストラをお願いしたのに最悪です。困って、その方にお話を聞いたところ『隣に人が乗るということは、何かしてくると思っていた』と、こちらの仕掛けを予測していたのです。そこで、考え出した番組の結論が『お年寄りでも危険を予測することで事故を減らすことができる』。結果は、想定したものと違ったのですが、それを生かすことで、どうやったら事故を防げるのかという教訓まで引き出せたのです。
というわけで、私が学んだのは、とにかく挑戦してみること。ほとんどのことは後で何とかなります。うまくいかなくても、かえってその方が結果的に良い方向に進むことも多いです。自分が予想していなかったことだからこそ、発見や感動があるのかもしれません。北大や、北海道という場所はそのチャンスの宝庫です!色々なことにチャレンジして、楽しく充実した学生生活を送れることを願っています!
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