こ、こ、こんにちは…。
お笑い芸人がモリシンイチをマネるような調子で第一声を発してしまった。
事前にトイレに行ったり、手をキレイにして…、と思いきや、男子トイレが見つからず、久しぶりに入った総合博物館を一回りしてしまうほど、異様に気持ちも高まっていた。
いよいよ「実験Cafe」が始まった…。
札幌雪まつり期間中の観光客が増える時期を見計らって「コミュニケーションの鍛錬」のために思いついた初めての試みは、緊張感一杯でスタートした。
11月の「北大Cafeプロジェクト」結成以来、徐々に学生や教職員が集まってきたものの、年明けからそれぞれが本業に忙しく、総意で進めることが難しい中、場面場面でそれぞれのメンバーが実験Cafeに関わってきた。1週間のシフトもほぼ全員が加わることができた。
「こんにちは〜」、「珈琲いかがですか」、「お休みになりませんか」それぞれの思いでお客様に声をかける。そうするとお客様から笑顔が返ってくる。一声かけてくれる人もいる。そのキャッチボールがどんどん重なっていくと何とも言えずうれしくなる。お客様も喜んでくれている。これが「ホスピタリティー」っていうやつか?
お客様の中には本州から観光で来られた方も多かった。「仕事の関係で、水産学部の展示に興味があった」と話す二人の女性は、2泊3日の雪まつりツアーで東京からやってきた。楽しいお二人の「逆ホスピタリティー?」を受けて、思わず無許可で「おかわり珈琲」を進呈してしまった(笑)。群馬からのご夫婦は、北大を卒業された息子さんから「銀婚式のお祝い」として、この旅行をプレゼントされたとか。「息子の在学時は一度も雪まつりを見ることができなかったから(息子のプレゼントは)うれしかった。北大には思い入れもあるし、思いもかけず学生さんたちと楽しい時間を過ごすことができた。」と喜んで帰られた。札幌市内に在住のご夫婦は、ご主人が本学の卒業生。卒業後は茨城に就職、昨年春のリタイア後、久しぶりに札幌に戻られたのだとか。「構内にいつでも迎えてくれるようなCafeがあったら、卒業生にとってはうれしいこと。ぜひ頑張ってほしい。」と勇気づけていただいた。
1週間の実験Cafeを振り返って、小さな一歩ではあるが目に見える形としてスタートできたことは、メンバー全員の喜びとして共有できた。また、人が人に「ありがとう」と伝えることの大切さを実感した。「おいしかった。ありがとう。」「こちらこそ(いらしていただいて)ありがとうございました。」日常、学生さんとの窓口業務を担当している中では、お互いに「ありがとう」と伝える場面は少ない。家族や周りの人たちには思っていても声にならないことが多い。Cafeでの短いやりとりで「人間っていいな」と何度も思わされた。そういう気持ちになると人と関わる仕事が楽しく疲れない…。
歌人の与謝野晶子は「いやいやする労働はかえって人を老いに導くが、自己の生命の表現として自主的にする労働は、その生命を健康にする。」という言葉を残している。今回の実験Cafeで、まさにこの名言を実感した。そして、私たちが夢見るCafeは「人が人を好きになれる場」と言ってもいいのかもしれない。 |