新入生の皆さん、入学おめでとう。北海道大学の教職員学生を代表して心から歓迎します。今日から諸君はあこがれの北大生として、まず札幌で生活をすることになりました。
北海道大学は、12の学部に、1学年約2,500名、併せて約11,000名の学生が勉学に励んでいる大学で、全国的に見ても最大規模の大学の一つです。新入生の諸君には2,500名の同期生がいるのです。それぞれは様々な進学動機、専攻分野、将来の希望をもっています。また、出身地も異なり、生活習慣もしばしば異なります。海外からの留学生であれば違いの大きさはなおさらです。
変化のない環境では生物は進化しないのと同様に、人間も進歩するには異なる他者との交流がきっかけとして必要です。是非、教室で、サークルで、又学内外のあちこちで、たくさんの同期生と交流してほしいと思います。そして、切磋琢磨といわれるように相互に人間性を磨きあい、幅を広げてください。ぶつかることを恐れてはいけません。同時にぶつかった相手を気遣うこころを持つことが必要です。もちろんこのような交流は同期生に限らず、先輩、先生との間にもあります。人生の先輩として、また学びの先輩として得るところが多いと思いますので是非心がけてください。周囲との交流の一方で、たまには一人で自らを見つめること、すなわち内省の時間も必要です。しかし、外とのつながりを断って、自分の殻に閉じこもることはしないようにしましょう。そして、自分と同様に必要としている友人のこのような内省の時間を尊重しましょう。
北海道大学は諸君がのびのびと大学生活を楽しめるよう万全の準備をしています。新入生を含む多様な学生を教育するに当たって、北海道大学は4つの理念を掲げています。すなわち、「フロンティア精神」、「全人教育」、「国際性の涵養」、「実学の重視」です。これらについて諸君は、これからもいろいろな形で聞かされたり読んだりすると思いますので解説は省きますが、北大で学ぶものは、等しく意識すべきであるという目標です。しかし、勘違いしないでください。理念を掲げているということが北大にはこれらの理念に関する授業がふんだんにあるということを意味するのではないのです。また、学生諸君が授業を受けてさえいればこれらが自然に身につくという性質のものでもありません。自らの行動あるいは思考を行うに際して正しいかどうかの基準といっても良いと思います。諸君が入学直後から受ける全学教育の膨大なカリキュラムの大部分は、これらの理念を意識して計画されているはずですから、授業を受ける側も意識してみるとおもしろいと思います。
希望に燃えて入学した諸君の中には、ともすれば、将来の専門分野に必要な、つまり自分が判断して必要と思われる、学問だけを修めればよいとする学生がいます。ところが、このような場合必要かどうかの判断基準の元となっている、つまり諸君の考えている専門分野像は、入学前のいわば過去の専門分野像です。4年後あるいは6年後に諸君が身につけることになる専門分野の姿ではないのです。諸君は将来の専門家になるのですから、せっかく選択した自分の専門分野の将来像を軽々に規定してはいけません。たくさんの科目が開講されていても、個人的には不足と思える分野や領域もあるでしょう。そのような場合は、図書館に行くなり先生に聞くなりして自ら学ぶ姿勢を持つことが必要です。
よく学びよく遊べ、といわれます。大学は勉強だけをするところではありません。勉強の合間の息抜きとしても、個人として学問とは別の可能性を広げるためにも、広い意味での遊びは必要です。このため、北大にはスポーツ、文化活動などの課外活動の機会がたくさんありますから積極的に参加しましょう。ボランティアなども交友関係を広げまた深めるよい機会です。このようなきっかけで終生の友が見つかるかもしれません。
健康に気をつけましょう。心身の健康あっての勉学で、健康を損なうことで得るものはありません。健康でいるためには規則正しい生活と規則的な食事がその第一歩です。親元を離れて暮らす諸君は、特に自己管理を意識してください。今まで何くれとなく世話を焼いてくださったご両親ご家族から離れた開放感で、ともすれば日常生活が野放図になりがちです。たまにはそういう時間も必要ですが、なるべく早く規則的な生活に戻る努力をしてほしと思います。
いくら優れた環境と交友関係に恵まれていても、悩みを持たない者は居ません。このような場合、一人で悩んでいてもなかなか出口が見つからないものです。あるいは間違った結論を出してしまうかもしれません。ぜひ、悩みに直面したら誰かに相談してください。打ち明けたり相談したりする相手が見つからない場合もあります。一番身近な相談相手はクラス担任の先生でしょうが、そのほかにも相談の方法はたくさんあることを知っておいてください。保健管理センター、高等教育機能開発総合センター、の学生相談室の窓口では、専門のカウンセラーが相談に乗ってくれます。諸君の秘密も守られます。ここでは学生生活をしてゆく上で出会うと思われる悩み事には、親切に対応してくれます。話を聞いて解決法を一緒に考えてくれます。ですから、学業のこと、生活のこと、人間関係のこと何でも気軽にまた深刻になる前に相談しましょう。
最後に、諸君は大学に入学した時点で、年齢とは関係なく、一人前の大人として社会から遇されることを感じるでしょう。同時に、自己規律に基づく相応の態度を要求されていることにも私は気が付いてほしいのです。大学生として、しっかりした社会人として何をなすべきか、今日からそれぞれ考えてください。
皆さんの北大での生活が充実したものであることを心から期待します。 |