ゲンプロだより

  いきなりだが、北海道といえば?…おそらく、雄大な自然とともに「ヒグマ」を思い浮かべる人も少なくないだろう。そう、「ヒグマ」は雄大な自然とその多様性を象徴する大型哺乳類であり、保全すべき財産である。 しかし、北海道に生息している「ヒグマ」は雄大な自然とその多様性の象徴であるだけではなく、農家やその「ヒグマ」が生息する地域の住民にとっては害獣といった極めて重要なマイナスの側面ももっている。今年度(2008年度)もヒグマによって道東・道南で2名の方が亡くなられた人身被害をはじめ、道内各地で多くの農業被害や家畜被害などが発生しており、早急に解決しなければならない問題の一つである。
  近年、そのような問題を解決すべく、日本国内でも「ヒグマ」の研究が多く行われるようになってきた。しかし、大半は遺伝や食性といった生態学的な研究であり、その知識だけでは前述のような被害・軋轢問題を解決に導くことは出来ない。生態学的な研究とともに、人間の生活がその生態とどのように関わって軋轢を生むのかを人間の意識から明らかにすることが、現場で「ヒグマ」と直接関わっている人を置き去りにしないという意味でも、今後の行政的な対策を構築する場合にも大変重要である。そこで今回は「ヒグマ」管理に対して人間側からアプローチを試みる社会学的な研究を行った。今回のプロジェクト地である上川町は観光地として大雪山国立公園を抱えており、「ヒグマ」が観光資源として人々を惹きつけている一方で、里地では主要産業である農業が「ヒグマ」によって被害を受けている。そのため、「ヒグマ」に対して様々な価値観が存在していると考えられ、この上川町での事例は北海道全体でヒグマ管理を考える上でも大いに参考になると考えられる。 調査は直接的な利害関係者(農家や酪農家、ハンターなど)である上川町住民に対する聞き取り調査および大雪山国立公園に訪れていた観光客に対するアンケート調査を実施した。また、調査に合わせて、住民や観光客に対するヒグマ情報の還元など私たち自ら啓蒙活動も実施した。調査の結果はやはり里山では一件当たり数十万から百万以上にものぼる農業被害・酪農被害が発生していたが、住民の感情は我々が思っていた以上に穏やかであり、電気柵など駆除以外の被害対策を住民みずから率先して行っており、望ましい状況に向かいつつある町といえた。しかし、被害が発生している以上、今後いっそう対策を充実させ被害を軽減させていく必要があるだろう。一方、観光客からも「ヒグマ」には遭遇したくないという意見が多く寄せられ、「ヒグマ」情報を望んでいる人が8割程度いることがわかった。特にインターネットからの提供を求める声が多いようであった。しかし、この結果は「ヒグマ」の観光資源としての価値を否定したわけではない。「ヒグマ」を遠くからみるという機会に対して観光客は需要を示しており、突発的な遭遇は望んでいないが「ヒグマ」の存在、みるということに対しては魅力を感じていることが明らかになった。
  上記の結果は住民と観光客の意識は町として、北海道として、駆除や保護に偏った「ヒグマ」管理ではなく、よりいっそうバランスのとれた管理を行っていくことで「ヒグマ」に関わる社会的効用を大きく増加させる可能性があることを示している。
  今後もよりいっそう多様な関係者(一般住民など(の意見を収集することで、将来の適切な「ヒグマ」管理を導けるような研究を行っていきたいと考えている。

ヒグマ被害軽減プロジェクト in 上川 代表 久保雄広(農学部3年)

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  春の陽気に誘われて、雪がわずかに溶け残る北大キャンパスを散策してみると、芽吹き始めた草木の新芽の合間に顔をのぞかせるのは、冬眠から目覚めた「ゴミ」の数々。日本一とも評される北大札幌キャンパスの景観を、もっとキレイにしたい…こんな時ひらめくのが、北大生ならではのフロンティア精神。ゴミの分類別統計を取って傾向分析や対策を研究したらおもしろいかな? 集めたゴミを燃料や肥料に転換して資源化すれば役に立つし勉強になるかも!なーんて、おもしろそうなアイディアが結構浮かぶんだけど、実行には何かとオカネがかかるもの。自腹でやるのはツラすぎる…そんな悩みを抱えるあなたに朗報です!「北大元気プロジェクト2009」では、学生の皆さんのアグレッシブな想像力を、なんと最高50万円まで支援します!

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