季節はずれのサークル物語


 

 常夏の国のジャマイカ選手が初めて冬季オリンピックに出たのは1988年のカナダ・カルガリーでのことである。その功績を元に映画化されたのが「クール・ランニング」、4人乗りボブスレーの物語だ。当時はけっこう人気になった。
 しかし、日本での注目度は一瞬のうちに下がる。先日のバンクーバーでは、日本男子チームが転倒し、最下位になったと耳にしたくらいで、未だにマイナー度は一二を争う。ところが、それほど不人気なボブスレーのサークルが北大にあると知った。しかも昭和41年の創部から一度も廃部にならずに存続し、毎年、卒業生はリーディングカンパニーや多方面に巣立っていくという嘘のような本当の話を聞かされ、その実態に迫りたくなった。
 この春、北大ボブスレー部の中堅どころになった藤平征(ふじひらせい)さん(法3)は、福岡市の出身である。
大学では変わったサークルに入ってみたかったという藤平さんは、新歓でボブスレーのビデオを見てそのスピード感に心が揺さぶられ、思わず入部してしまったらしい。
 他のメンバー(10人)も全員道外勢、しかも雪国以外が多いとか。
「みんな個性的な人が多くて、面白いことに飛びつきやすいというか、行動力がある人が多いですね。ふいにネパールや海外ボランティアに行ったりとか・・。」
―――ボブスレーの面白さは?
「重量およそ200kgの鉄ぞりで、全長約1kmのコースを時速100kmくらいで駆け抜けるのですが、求められるのは瞬間的なパワーとスピードです。結果的に100分の1秒を競いますが、そのわずかの差の違いがすごく大きくて、自分の最高タイムを少しでも上回ったときが一番うれしい瞬間ですね。」

 

ドイツ語で「そり」という意味を持つボブスレー。

 およそ50数秒の中での勝負だそうだ。国内の公式コースは長野にあるだけ、夏場は北大陸上競技場の隅っこでレールボブスレーをひたすら押してイメージをつかんだり、筋トレの日々を繰り返し、一転、12月末から約1か月間は、北欧での一瞬の夏を楽しむかのようにボブスレーに集中する。
 その魅力は、スタート前の「静」から「動」へと変える瞬間と、頻繁な急カーブを咄嗟の判断でコントロールする瞬間にあると見た。そんな勝負の繰り返しで、いつのまにか集中力と瞬発力と決断力が養われるのではなかろうか。そして、そんな力が将来様々な分野で活躍できる所以だと感じた。
 そのOBの面々は、現在に至っても個性派の極みだそうで、住○、○菱、○TT、○BM、○下、○立、○HK、○日鉄等、○で文字消ししても分かってしまうような有名企業で活躍、毎年恒例のOB会を兼ねた激励会に駆け付け、現役生に熱い支援を送ってくれるそうだ。
―――最後に新入生に向けてセールスポイントを!
「何でもいいから日本のトップレベルになりたいという人には近道ですね。全日本級や世界で活躍するのは夢ではないはずです。
そして、有名人に会うこともできますよ。バンクーバーの前、五輪メダリストで全日本女子ソフトボールの重量級エースがボブスレーに挑戦していました。仲良くなりましたよ♪」
どうせなら浅田真央ちゃんがいいのだけど――――。(K)
藤平征

法3・藤平 征さん「ボブスレーには18禁の年齢制限があります。新入生にはグッドタイミングなスポーツなので一緒に頑張ろう!」

 
 
 
 

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