「秋に帰ってこいよ!」神宮の観衆が北大ナインに贈った言葉は暖かかった。その言葉を胸に、学生たちは厳しい夏の練習に励んできた。しかし、秋の結果は意外にも学生たちに試練を与えた。
秋季リーグ第2節第5日目、前試合の結果で事実上北大の優勝は消えてしまった。既に覚悟していたこととは言え、皆はやるせない気持ちのままに淡々と試合をこなした。「もう一度神宮」を合い言葉に、4年生は引退を先延ばしして秋にかけた。第1節では「没収試合」という思わぬ敗戦もあったが、春季王者としての見えぬプレッシャーがあったのかもしれない。皆の落ち込みようを察知して無理におどけて盛り上げようとする上級生もいた。ガランとした札幌ドームに響き渡る第100代北大応援団の声援。選手も応援団も、皆、それぞれに最後まで力一杯戦った。結果は通算5勝5敗で4位に終わり、今季の日程を終えた。
今期硬式野球部主将の城嶽祐太朗さん(工学4年)は4年間をこう振り返った。
自分は神宮に行くために北大を志望した。幸いにも最終学年で全国初勝利を達成することができたが、今年の結果がすべてではない。試合でチームに迷惑をかけたり、4年間のいろいろな思いが蘇る。うちのチームは4年生全員が中心となって部を運営するので主将のプレッシャーはなかった。チームワークは「全員で勝つ」という方針でまとめてきた。1年生から4年生までそれぞれが自分の役割を考えた。全国の有力校は個人のレベルが高いので、自分たちはチーム全体で対抗しないと勝てない。そのために「すべての人間が試合に入り込もう」と何度もミーティングで話してきた。今年の後輩たちはとにかく元気。声で相手チームにプレッシャーをかけてくれた。勝てたのはそんな力が大きかった。自分が1・2年の時はそこまで元気だったか…、今になって悔いが残る。そして、神宮球場で八戸大に負けた悔しさも残っている。後輩たちには、その元気をそのままに全国のトップレベルに対抗できる力をつけてもらいたい。そしてまた、次の世代につないでほしい。
えるむ134号の特集「一年の計」で「神宮で勝つ」と誓ってくれた泉澤知宏さん(水産2年)は、先輩たちの活躍をこう振り返った。
一言では言えませんが、あの時(全国初勝利)のみんなの雰囲気は何かが違っていました。1人1人のモチベーションとか…、うーん、簡単には言えない、言えるものじゃないす。今回は東京ドームで打席に立たせてもらったけど、来年はレギュラーとして、神宮で勝ちたい。10月から函館キャンパスに移行しましたが、今年の中心選手でもあった福田裕先輩(水産・3年)に練習パートナーになってもらって、先輩を目指したいす。
人生は、泣いたり笑ったりが楽しい。泣いたり泣いたりは散々だが、笑ったり笑ったりもつまらないと思う。敗北もまた勉強だ。北大生には、正課の他、一つの目標に向かって打ち込めるものをぜひ見つけてもらいたい。(K)