探訪「有機元素化学研究室」

 今年の10月、鈴木章名誉教授のノーベル化学賞受賞決定のニュースが舞い込んだ。本学はもちろん、日本中が快挙に湧いた。様々なTV報道を見守る中、先生が少年時代に「鵡川の金治郎」と呼ばれていた逸話や鵡川名産のししゃもが紹介されたシーンは、多くの視聴者を和ませ、先生のお人柄と周囲の暖かさに感動したことだろう。以来、地下鉄の駅やえるむ街のあちこちで老若男女が本を読み歩く姿を目にするようになった。俄然、キャンパス内外が活気で溢れる中、一際目を輝かせているのが本学の「有機元素化学研究室」の学生たちだ。同研究室は、工学部応用理工系学科応用化学コースの研究室であり、総合化学院総合化学専攻分子化学コースの研究室でもあるが、鈴木章先生が長年有機ホウ素化合物の研究に勤しまれた旧工学部応用化学科の有機金属化学研究室を前身とする部屋である。そこで、今回、同研究室所属のお二人の学生に研究室の紹介と受賞決定後に鈴木先生とお会いする機会に恵まれた悦びを伝えてもらうことにした。

有機元素化学研究室のみなさん
有機元素化学研究室のみなさん。(赤シャツ姿が開翔太郎さん)
 
鈴木章
有機元素化学研究室を訪問された
鈴木章名誉教授




















あやかり金治郎
鈴木先生にあやかり「金治郎」を目指す(?)学生



 2010年10月6日、私たちの研究室では全員がパソコンの前に座り、ドキドキ、わくわくしながらノーベル化学賞の発表の瞬間を待っていました。当研究室の恒例行事です。いよいよ発表の瞬間、まずはヘック先生が呼ばれ、次に根岸先生が呼ばれました。この時、受賞の期待から研究室のボルテージが上がったのは今でも覚えています。
 すると、「きたー!」一人の学生が叫びました。織田裕二ではありません。それに呼応するように「やった!」「すごい!」などの歓声が研究室を包みました。鈴木章先生が受賞されたのです。この瞬間、全員がスタンディングオベーションで鈴木先生の受賞を喜び合いました。
 また、同じ研究棟の他研究室からも学生や先生方がお祝いに駆けつけてくださいました。そうこうしているうちに記者の方が訪ねてきたり、当日は取材の電話が鳴りやみませんでした。改めてノーベル賞受賞の偉大さを認識し、このような伝統のある研究室で研究できることに喜びを感じました。
 10月25日、当研究室の学生と鈴木先生との会談の機会を幸運なことにいただきました。鈴木先生は分単位のスケジュールということでしたので、時間こそ短かったものの学生が思い思いの質問を先生にしました。特に印象に残っていたのが、研究に対する取り組み方についての質問で、鈴木先生はこう言いました。
「重箱の隅をつつくような研究はしないで、どんな分野でもよいから新しいことに挑戦しなさい」
 私はその言葉を聞いた時、先生の研究に対する情熱のようなものを感じました。また、新しいことに挑戦することは、これからの人生何をするにしても大切なことだと思いました。
 ここから私たちの研究室での生活についてお話したいと思います。私たちの研究室は、総合化学院に所属しており、有機元素化学研究室として、総勢23名で、伊藤教授、石山准教授、山本助教の指導のもと「触媒反応を利用した有機ホウ素化合物の効率的合成」と「有機ホウ素化合物の触媒反応」を研究しています。毎朝10時ごろに登校し、それぞれのテーマについて研究しています。さまざまな実験器具を駆使し、新たな反応の開発を目指しています。また、週に1回、有機金属化学に関する論文を紹介する雑誌会や勉強会もしています。ソフトボール大会、ジンパ、鍋party、お好み焼きparty、天ぷらpartyなどなど勉強以外の行事も最低月1回開催され、みんなお酒に呑まれています。ちなみに今年のソフトボール大会では、見事優勝というすばらしい結果を残すことができました。みんなの練習の成果、チームワークが優勝のカギになったことでしょう。このように研究室では研究ばかりでなく、寝食をともにすることで絆でつながった仲間、いいえ、familyができます。学部の1、2、3年次は研究室のイメージがあまりわかないと思います。研究室って忙しいんじゃないのと思っている人もいると思います。実際、研究室は忙しいし、時間の制約が学部に比べて大きくなることは確かです。しかし、私の場合、ラグビー部での活動もしていましたし、アルバイトもしていました。このように研究室に入ると毎日が充実した生活が待っています。
 もし、私たちの研究室に興味があるという方はぜひ一度研究室に来てみてください。私たちと一緒に新しいケミストリーを作っていきましょう!

大学院総合化学院総合化学専攻
(修士・1年)開 翔太郎

サインをする鈴木先生
色紙や白衣に「精進努力」とサインされる鈴木先生。学生たちには気さくに声をかけていただいた。


 私は今、先日ノーベル賞を受賞された鈴木先生がいらっしゃった有機元素化学研究室に所属しています。
 受賞セレモニーの際は鈴木先生に花束を贈呈する役を任されました。またとない経験をすることができたのでとても嬉しく、光栄に思っています。
 鈴木先生にお会いするのは今回が初めてだったので最初はとても緊張していましたが、花束を渡す際に気さくに声をかけてくれたので緊張がほぐれました。鈴木先生はとても紳士な方でした。男性の方はみならいましょう。
 受賞決定から1カ月がたった今でもTV局の人が研究室に取材に来たりしているのを見ると、ノーベル賞とは本当に影響力のあるすごい賞なのだと感じています。
 また工学部応用理工系の応用化学コースには有機系の研究室が私の所属している有機元素化学研究室を含め3研究室あります。有機系3研究室はとても仲が良くみんな元気いっぱいです。四月の新歓の飲み会は3研究室合同でやったりしますがいつも盛り上がってとても楽しいです。また、工学部は女子が少なく、男ばかりのイメージがありますが、有機系は現在8名の女の先輩方がいるので、飲み会などでは女子トークに花が咲きます。男友達とはできないようなディープな話もあったりなかったり。とにかく、楽しいです。
 ここからは、4年時に行われる研究室配属の話をしたいと思います。工学部応用理工系の応用化学コースでは4年生の4月に研究室配属されます。研究室に入ると、授業を受けテスト勉強をし、単位を取るという研究室配属前のスタンスとは違い、自分で先輩に聞いたり論文を調べながら実験を進めていかなければならなくなります。配属当初は生活も変わり新しく覚えることや勉強しなければいけないことがたくさんあり大変でしたが、先輩や先生方がサポートしてくださるので心配はありません。研究室に入り半年が経ちここでの生活にもだいぶ慣れてきましたが、今も実験方法に関してや、有機化学に関する知識など新しいことを勉強する毎日です。日々、戦いです。
 有機系は一般的に忙しいなどと言われますが、部活をしている方や教職をとっている先輩もいます。私も、教職の免許も目指して日々奮闘しています。つい先日は研究室を2週間離れ、自分の卒業した高校へ教育実習へ行ってきました。2週間という短い間に教師の活動のすべてを理解することは難しかったけれども、少なくとも一端は見ることができたようなきがします。今後の生活のどこかで今回の教育実習の経験を生かせていけたら良いと思います。
 ここまでつらつらと私の経験を書いてきましたが、具体的にどのような生活をしているか紹介したいと思います。

金岩さん



































 
 

いちにちの生活


 もちろん土日は休みです。思い思いの時間をみなさん過ごしています。ちなみに私はアルバイトを頑張っています!
 気になる人はぜひ研究室に遊びに来てください!指名をしていただければ、僭越ながら私が紹介します!

工学部応用理工系学科
(4年)金岩 詩織




鈴木−宮浦カップリングとは?
有機元素化学研究室では、「触媒反応を利用した、有機ホウ素化合物の効率的合成」と「有機ホウ素化合物の触媒反応」について研究しています。
鈴木―宮浦カップリングとは、ハロゲン化アリールと有機ホウ素化合物をパラジウムなどの金属触媒下で反応させ、ビアリール化合物を合成する方法で、医薬品、液晶材料、農薬を始め、さまざまな分野で広く利用されており、産業的に欠かすことのできないものとなっています。(注.宮浦先生は、今年3月に定年退職された「有機元素化学研究室」の前教授である。)

カップリング図


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