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海が割れる
海洋アイデア・コンテスト最優秀賞受賞

港湾新時代をひらく瀑水桟橋

大学院工学研究科都市環境工学専攻
交通システム工学講座交通制御安全工学分野

岸   邦 宏

 7月20日の「海の日」にちなんで,運輸省と(財)沿岸開発技術研究センターの主催により,「みんなで創ろう海洋国日本! 未来のアイデア大募集」というコンテストが行われました。これは将来の海洋・沿岸域の利用につながる独創的なアイデアを募集したものです。当研究室では約1ヶ月間にわたり学生が集まり,海全般に関する問題点と対策から話し合い,議論を重ね,最終的にアイデアを絵にまとめて,学校部門に応募した結果,最優秀賞に選ばれました。
 私たちが提案したのは「瀑水桟橋」というアイデアです。図のように海が2つに割れて,人々は海水が落ちている中を通りフェリーに乗り込んでいきます。桟橋を通る人々は水の中を通る感覚におそわれ,上には虹が見え,その向こうに青空が広がっている光景を思い浮かべてください。
 近年,沿岸域の整備は「親水空間の形成」に力がおかれ,人工海浜などの施設が建設されてきました。しかし,現実には港湾では立入禁止の場所も多く,親水空間は制限されたものが多かったのが実情です。そこで私たちは新しい形での超親水空間を提案しようと考え,フェリーが出航する際の旅情やノスタルジーを誘う光景に着目し,「瀑水桟橋」が生まれました。
 この「瀑水桟橋」は,単にそこを通る人を楽しませるだけではなく,落下した水を取り込み,淡水化して工業用水や生活用水などの中水道として活用するとともに,取り込む際に浄水処理を行い,港や海辺の水質改善にも寄与します。親水だけでなく,利水・浄水を同時に実現するもので,地球環境にも貢献できるものになると考えています。
 瀑水桟橋を通る人は,他では体験できない感動的な光景を目にすることができるでしょう。海水が落ちてくる海中部分に立てば,視界に入るのは水と空だけです。晴れた日には,その美しさは格別でしょう。その海水は凄まじい勢いで目の前を落下しており,引き込まれそうな恐ろしさも味わうことができ,これまでとは違った親水空間になるはずです。私たちは今回このようアイデアを提案しましたが,今後実現可能性について運輸省と共同で検討調査を行うことになっています。実現には多くの課題があります。しかし,このような夢を実現させていくことが,工学を学ぶ私たちに与えられた使命だと思っています。

(きし くにひろ,博士後期課程2年)

 

 

受賞したグループ8名のうちの5名

 

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