エルム街の偉人たち

 

バーバー・マコト

湯 浅 和 夫(ゆあさ・かずお)さん

 ここ北大界隈には,何十年来,北大生と関わり続けているオッチャンやオバチャン達がたくさんいる。そんな北大生とオッチャン達とのふれあいやエピソードを紹介しよう。


 育毛・養毛ブームと言われる昨今,抜け毛に気を使う世のオジサンたちとは対照的に,ふさふさの学生諸君は確実に毛が伸び,月に1度は足を運ぶのが床屋さんだ。そこで,今回訪ねたのが北16条西4にあるバーバー・マコト。ご主人の湯浅和夫さんは苫小牧から札幌にやってきて,ここで店をやっていた先代の下で3年間修業,そのまま店を引継ぎ,併せて18年間エルム街に住んでいる。店の屋号は先代からのものだ。
 大学の目の前にあるだけに,客層の8割を北大関係者が占めている。中でも多いのが恵迪寮の学生で,入学シーズンや寮行事などの時には,片方の眉毛がなかったり,半分坊主やモヒカン刈りの1年生が先輩に言われ,修正(完全坊主)にやって来ることも。「元気な人に囲まれているからいつまでも気持ちだけは年をとらないね」とご主人。全国から集まる学生はみな個性的で,頭を刈りながら郷の話を聞くのも楽しみの一つ。「たまに土産を持ってきてくれる子もいるよ」。店に来てくれる学生を通じて,寮・サークル・周りのボロアパートに住む学生とも交流があり,卒業後,新婚旅行の途中に散髪に寄ってくれた学生もいる。
 学生がもっと蛮カラだった時には,「イッキ飲み」もまっ盛り。「S・S」と言われる魔法の液体(?)を煽り,寮歌を歌い奇声を発して界隈を練り歩き,ボロ家(本人談)に住むご主人は,度々睡眠を妨げられたり店のサインポールを壊されたりもした。そんなある日の朝方,店の前にはトグロを巻いた「ウ○チ」や「ゲロ」などがあって,それを小鳥たちがついばむ様を見ていて感じる事は「世の中,無駄は無し!!」。
 過ぎ去ればすべて「良い思い出」と,寛大なご主人も段々と大学が「北大レジャーランド」になっていくのではないかと危惧する。蛮カラ気風が少なくなり,「かっこ良い」若者に変わっていく。「茶髪」に興味を示す学生も増えてきた。住む所もボロアパートから「鉄の扉」が付いたワンルーム・マンションに。段々と地域とのつながりが希薄になっていく。
 「ホントに学生は勉強しているのか」と心配になる事もあったが,呼ばれて仕方なしに出かけた「オケラ」のコンサートで,学生の真剣な表情を見ると「やっぱり大学生なんだ」と一安心。
 店のお客さん(学生)は,4年間の期限付のようなもの。卒業時の別れは,やっぱりお互いに辛いとか。あたかも,お相撲さんの断髪式のように「最後のハサミ」を入れる。「けどね,恵迪のお客さんは大抵7,8年は来てくれるから良いお客さんだよ」(笑)。
 エルム街のご意見番として無くてはならない湯浅さんだが,北18条道路整備計画の関連で近い将来「バーバー・マコト」を移転せざるを得なくなる。18年の間に「世の豊かさ」とともに学生も変わって来たが,湯浅さんも今,大きく変ろうとしている。

(夢 一夜)

 

「写真は勘弁してよ」と湯浅さん

 

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