「アパトゥリダ」 店主
中 嶋 純 子 (なかじま・じゅんこ)さん
今でこそ「国際交流」という言葉が盛んに叫ばれ,ある程度広まってきているものの,一昔前のまだ注目されていない頃から,一人のオバチャン(親しみを込めて)が地道に努力して若者たちを助け,国際交流に貢献している。
北16西4にあるレストラン「アパトゥリダ」の店主中嶋純子さんがその人。その中嶋さんと出会った若者たちが,留学生との理解を深め交流をめざす「地球倶楽部」の北大生たちだ。
中嶋さんは長く道庁に勤める傍ら,ご主人が経営していた喫茶店を手伝っていた。ところがご主人の病気で経営をあきらめ,第三者に委託することに。当初,そこから「地球倶楽部」が店を借りて運営していたのが出会いの始まりで,倶楽部の趣旨を理解した中嶋さんは,何時の頃からかいっしょにやろうということになった。
「地球倶楽部」は交流の場を設けるのを目的としているので儲けは度外視なのだが,当時は家賃も払えぬ赤字続き。倶楽部の初代会長だった中国人留学生がやむを得ず活動を断念しようとしていた矢先に「もう一度頑張ろうよ」と中嶋さんが立ち上がった。中嶋さんは食べるものも減らして家賃の不足分を補ったとか。その奮闘ぶりに会長もいたく感動。会長は知り合いの北大生に店の片隅を貸して家賃の負担を軽くした。その片隅というのが当時できたばかりの「YOSAKOIソーランの事務局」だったというから驚きである。
みんなの努力でやっと波に乗りかけた時に,ビルのオーナーから店の又貸しの誤解を招き訴えられることに。しかし,中嶋さんの人柄と国際交流に対する熱意に相手の弁護士が理解を示し,オーナーを説得。その後は合意書を取り交わし,月から木曜日を「アパトゥリダ」金・土曜日を「地球倶楽部」として運営している。今では一般からの賛助会員も募り,たくさんの人が応援してくれている。
現在,中嶋さんはボランティアの主婦の方たちと仕込みを担当,店は「倶楽部」のスタッフ25名ほどが無報酬で交代で担当している。スタッフには留学生の他に藤女子大の学生なども加わっている。
店の中心メニューはタイ人留学生のお母さん直伝によるカレー。「レッドカレー」「グリーンカレー」にマレーシアの「イエローカレー」が加わる。まるで信号機のような三色のカレーが味わえる。
週末の夜には何か国もの留学生が集まって賑やかになる。そんな時,中嶋さんは昔の大変だった頃のこと,当時のスタッフのことを思い出す。スタッフが一つ一つ手作りで作り上げてきたことを。
最近2階のマンションの部屋から漏水したため,保険で天井などを直すことになり,店内が黄色を基調としたものに模様替えされ,ますます異国情緒豊かになった。「水漏れ長者ですよ」取材時にたまたま客として来ていた元スタッフの卒業生が笑った。
その斎藤さん(H6卒,通称ゼキさん)は中嶋さんについて「いつもチャキチャキしていて本当に年の差を感じさせないんですよ。それに話題が豊富でいつもお母さんの回りは明るいっす。持病の心臓病も僕達に隠してがんばってきたんですよ」と話してくれた。
中嶋さんは,今は国に帰った留学生と文通したり,現留学生から英語を習ったり,お茶を教えたりの日々。「子どもたちを守らなければならない。その気持ちが張りになって,私の健康も回復したのね。子どもたちのおかげよ。だけど国際交流も盛んになってきたし私の仕事も終わりかな」と言うものの「日本の母」として「札幌の母」として子どもたちがまだまだほうっておかないだろう。
インドネシアの留学生が名付けたという「アパトゥリダ」ギリシャ語で「無国籍」の意味。無国籍の賑やかな笑いを措しみつつ店を後にした。
中嶋さんを囲んで元スタッフの斎藤さん(右)と
現地球倶楽部会長の越野さん(左,藤女子大生)
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