北海道大学大学祭実行委員会委員長 |
楡陵祭実行委員会委員長 |
尾 形 祐 介 |
現下、大学祭は危機に瀕している。第一の危機は、有形・無形の規制の強化である。東京大学・駒場祭の夜間撤収計画や、早稲田大学の学祭中止を鑑みるまでもなく、この北大にも規制の波は激しく打ち寄せている。今年度から楡陵祭のオールナイト活動が廃止となったことは、規制の一つが発現したに過ぎず、無形の規制に至っては枚挙に暇がない。第二の危機は、大学祭の目的混迷化である。大学祭には、本来三つの柱がある。大学の学問的な活動の公開、学生の自由な活動の発表、地域の方と学生との交流、この三つである。しかし、現実として学術公開への需要は低く、公開しようという大学側の積極性も低い。ミレニアム企画として数多くの大学施設に公開への交渉を行ったが、協力頂いたのはわずか三施設に過ぎない。自由な活動の場には、刹那的な享楽と自己無責任が蔓延し、明らかに需要に対して供給過剰である。地域の方と学生との間には、情報の停滞による恒常的な乖離が生じている。
そのような状況を全て認識し、受容した上で20世紀最後の北大祭に臨んだ。学術公開、学生の自由な活動、地域との交流、そのどれかを主眼とする、という訳ではない。この三つの柱各々においてできる限りの高みを指向し、一つ上の次元での止揚を目指した。その統合的発展という新たな挑戦の一端は、学術公開においてはミレニアム企画・リレー講演会であり、自由な活動においては楡陵祭実委推奨企画であり、地域との交流においては回覧板の利用・地域を活性化する懇談会への参加である。また、「祭り」として必要なモノ、日常からの隔絶・人々の集結・追憶の共有というモノを打ち立てるため、北大祭ライブ2000を企画した。
実際に大学祭当日を迎え、やはり現実はシヴィアだった。当日、悪天候という条件もあったが、学術公開への参加者は多いとは言えず、実委推奨企画は他の模擬店の列に半ば埋没してしまい、回覧板を見て来場した方は少なかった。オールナイト廃止に反発し、強行しようとした参加団体もいくつか存在した。また、オールナイト存否には関係なく、事件・事故が多発し、警察や救急の方には多大な迷惑を掛けてしまった。
だが、悪いことばかりではない。北大祭ライブ2000は盛況の中で幕を閉じ、地域との繋がりとしては精神病回復者施設の参加等があり、学生の自由な活動が人を惹き付ける力は悪天候・オールナイト廃止による影響を圧倒した。また、大学祭の運営面でも喜ばしいことがある。大学祭を運営する事務局員は、当日の櫛風沐雨の中、役割を完うしてくれた。人数の面では、一昨年は十数人であったが、昨年は約三十人、今年は約五十人にまで増加した。人員の倍加が単純に実行力の倍加に繋がる訳ではないが、そこから生まれ出る様々な可能性は広がりを見せる事になるだろう。
最後に、自今の大学祭が求める道は、大学祭に関わる者同士の双方向性の強化だと考える。実行委員会の決定事項を参加団体が遵守するという関係、参加団体が不都合を述べ実行委員会が改善するという関係、来場者は単なる消費者になってしまう関係、そのような硬直した関係性を打破し、実行委員会、参加団体、来場者各々の双方向の動的な関係性が望ましいと思う。