(株)風の旅行社  寺山 元


プロフィール
新潟県出身 
1986年 北海道大学入学、山スキー部所属
1991年 北海道大学工学部(土木)卒業

 北海道のおおらかな大自然に深く影響を受けすぎたのか(?)、一般の同級生と比べると、随分、毛色の違った道を歩いています。卒業式の1週間前に、クラーク会館にて結婚式を挙げた後、アンダーセンコンサルティングという外資系経営コンサルタント会社に3年ほど勤め、その後現在の風の旅行社の東京本社で3年、同社の大阪支店開設のため、支店長として大阪に移って4年目です。ネパールやモンゴルなど、辺境地系専門の小さな旅行社ですので、企画、販売、添乗から経営、経理に関わることまで、なんでもやっています。土木工学とはあまりに関係のない仕事ばかりで、ご指導いただいた先生方にはなかなか顔向けできないのですが……

 そんな主流からはずれた私が、ここで後輩たちに伝えられる体験は、2000年5月に行ったヒマラヤ山脈チョーオユー峰(8,201m:世界第6位)への登頂及び山頂からのスキー滑降です。8,000m峰山頂からのスキー滑降は日本人初の記録で、一部の新聞などでも取り上げられました。8,000m付近となると、酸素は地上の1/3。普通に生活するだけでもどんどん衰弱していきます。1ヶ月かけてその薄い空気に体を慣らし、山頂を目指す日は酸素ボンベをつけて挑みました。地球上を、人力で、もっとも宇宙空間に近づく行為と言えます。

8,201mの山頂にて、背後にエベレストが見える。

 そこでのスキーは厳しいものでした。一つ一つのアクションを起こす一瞬ごとに、身体の細部までイメージどおり動くか、 判断力は失っていないか、装備は大丈夫か、技術的に行けるのかと、極限まで集中力を高めていました。山頂から標高差2,000m程を滑りましたが、最大の難所では、雪の状態が悪く、遭難者の遺体を発見したり(!)で、自分の限界を悟り、スキーをはずして引き返した部分がありました。
 今回の体験でもっとも自分にとって意義深かったのは、実はこの「引き返せたこと」です。自分の意志と判断で、「生」をつかんだと言う実感。何かと突っ込んでしまう性格でありながら、引き返しを選択できたことは、私個人の今後にとっては、とても意義深いもののように感じています。

標高7,000m付近のスキー。悪雪に苦しみつつ。

 誤解の無いよう、私は冒険家ではありません。大学で山の経験や、仕事上不便なところで生活の経験などはありますが、基本的には毎日、エアコンの利いた季節感のないオフィスで机に座って仕事をし、休日は昼まで寝坊が楽しみのサラリーマンです。ただ、いよいよ見通しの利かない時代の中で、今後の人生も面白くしようと考えてます。自分の生命力、集中力、やりたいこと実現能力、みたいなものを試すことができた、人生でもう一勝負する戦闘準備を整えた、それが、私のヒマラヤ8,000mの体験でした。
 みなさん、大いに大学生活を楽しんでください。



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