日高山脈館学芸員
小野 昌子

プロフィ−ル
1989年 
北海道大学入学
1995年 
北海道大学大学院理学研究科地質学鉱物学専攻博士前期課程(修士課程)修了
2000年 
北海道大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻博士後期課程単位修得退学
 土曜日の朝。寝ぼすけの私にとってはややつらい時間ですが,この日だけは少し早く起き,コ−ヒ−を飲みながら一本の電話を待ちます。
 リリ−ン!さあ来ましたよ。電話の向こうからアナウンサ−さんの声が聞こえてきます。『それでは自然情報のコ−ナ−です。今日は日高町にお住まいの日高山脈館学芸員,小野昌子さんにお話をうかがいます。』約5分間石にまつわるエピソ−ドをお話し,めでたく電話は終了となります。
 この儀式は昨年一年間続きました。NHKラジオ朝(道内向け)の人気コ−ナ−『自然情報』の土曜日を担当することになったのです。どんな様子だったか,一つお話しましょう。
 その日は「生活の中の石」として粘土を紹介しました。粘土は焼き物のみならず,高級紙に配合されたり,あるいは建設関係や医療関係でも使われるなど,非常に幅広く利用されています。中でも化粧品類には欠かせない素材であることに的を絞り,粘土の持つすぐれた性質やその原因,実際に粘土を使った製品が使いよかったことなどを紹介しました。
 それを聞いたある女性が,山脈館に直接電話をかけてこられました。「私もずっとあるシリ−ズの化粧品を使っていて,とても気にいっていたんです。粘土を使っているというのが売り物だったんですけど廃番になってしまって…(後略)」
結局『話の中に出てきたのはなんという製品か?』がお聞きになりたかったのですね。私が試した製品はお教えしましたが,果たして彼女の肌に合ったでしょうか…?
 ラジオの仕事を受けたことで,様々な゛いいこと゛がありました。山脈館の知名度が上がったこと,実際にお客さんからの反応を得られたこと,などの目に見える効果。話をまとめる技術がついてきたこと,これも大きな収穫でした。特に,アナウンサ−さんという伝える本職の方からアドバイスいただけたのは貴重な体験となりました。
 もちろん,たいへんだった点もあります。
まず声だけで伝えなくてはならないこと。テレビと違い,写真や図はもちろんのこと,身振り手振りを使うわけにもいきません。また,専門外の方にも興味を持ってもらえるよう,耳で理解してもらえるよう,話題や調理法をその都度考えます。 ゛果たしてネタが続くだろうか゛というのもずっと悩みの種でした博物館の仕事は多岐にわたります。お話した゛ラジオの仕事゛は中でも予想外のことでしたが,他にもやればやるほど範囲が広がるのが実感できます。専門外の範囲が非常に多いのも,裏を返せば゛知る喜びを味わえる゛という贅沢な仕事になるわけです。
 これから就職されるみなさんへ,もし私からアドバイスができるとすれば…
自分で範囲を狭めてしまわないこと。あまりに強い思い込みは,可能性を自ら手折ってしまうことにもつながりかねません。どこにどんなチャンスが転がっているかわかりませんよ。
 それから,世間の常識や思い込みが正しいとも限りません。逆に自分の物差しの方を取り替える必要が出てくることもあるでしょう。
「これってどういうこと?」と根本から問い直してみることが必要な時代ではないかと思います。

何はともあれ,健康第一です。どうぞ元気でお過ごしください。もし日高町を通ることがあったら,ぜひ山脈館にも遊びに来てくださいね。

日高山脈館
日高山脈館主催の「日高山脈ネイチャ−セミナ−」で動物の足跡をさがす
日高町営の自然博物館。日高山脈・日高町周辺の地質を中心に,動植物・登山・産業などを紹介。日高町道の駅「樹海ロ−ド日高」に隣接
入 館 料 大人200円,高校生以下100円 団体割引あり。
休 館 日 月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
営業時間 夏期 10:00〜17:00(入館16:30)  冬期 10:00〜15:00
電話・
ファックス
01457―6―9033
メ−ル hmc@town.hidaka.hokkaido.jp
U R L http://www.town.hidaka.hokkaido.jp/hmc/






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