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札幌南高校生への授業の一こま |
札幌南高校の生徒を対象とした化学の授業が,理学部化学科の教授10名による10回のシリーズとして,平成13年10月から12月の間,毎週1回90分の授業として実施されました。この試みは,教務委員会での高大連携の在り方の検討の中で,試行的に行うという形で位置づけられたもので,北大の部局間プロジェクトとして実施されました。
理学部化学科では,大学入学後の進路変更希望の学生が毎年かなりの数にのぼる点や,化学科に残っても意欲を失っている学生も多いことに,かねてから強い問題意識を持っていました。学生の間に入学前の化学に対するイメージと入学後の実際との間のギャップ,いわゆるミスマッチが多く見られました。このような問題の一つの解決策として,高校生を対象に試行的にシリーズで化学の授業を行う計画が検討され,札幌南高校の協力を得て実施されました。終了後の3月に高校側,大学側が集まり,徳永教務委員長の出席も得て反省と今後の対応が話し合われましたが,この試みが化学の研究の最前線を高校生に紹介するとともに,進路決定にも重要な情報を提供し得たと考えられ,上記の諸問題に極めて効果的に対応できたとの高い評価の声が多くありました。
実際の授業は,週一回午後4時30分から6時まで,理学部内で行いましたが,3回は南高校側に出向いて行いました。各講義は独立した形で実施されました。講義後には研究室見学も組み入れました。高校生には予あらかじめ講義内容の冊子を配付し,受講希望者を募る形を取りました。受講者も10回まとめての受講ではなく,1回ごとに自由に参加出来るやり方としました。実施前の段階では,2年生を中心に20名程度の受講生の参加の見通しが高校側からだされていました。しかし,実際に受講した生徒数はこの予想を大幅に上回りました。特に1年生の受講希望者が非常に多く,受講者数は全体で最高72名に達しました。
毎回講義後に取った生徒からのアンケートや,講師のコメント等をみますと,本プロジェクトが当初の予想を超えた大きな成果をおさめたことが読み取れます。本研究プロジェクトが目指した目的は概おおむね今回のような講義の実施によりかなり効果的に達成できるとの見通しが得られました。さらに,実施してみて高校生の反響の大きさに当惑しました。予想を大幅に超える受講者数,及び受講者の積極的な反応は,今の高校生がこのような授業や大学の研究室の見学のような,研究の最前線に触れたいという強い希望を内在的に持っていることを示しています。実施者の正直な印象は,高校生の大きな反響は,化学の講義を実施したからではなく,何か科学的な内容の講義を大学の先生が行い,研究室見学も出来るということに対するものであると考えられます。このことは,高校側で不参加者も含めて取ったアンケートの中により具体的にみられます。どのような分野なら参加したかとの問に文系の内容ならと答えた生徒もかなり見られました。このような,高校生の内在的な希望に対して,理学部化学科以外の分野でも広く対応してゆく必要性があるように思われます。なお,高校生の生の声などを含めた詳細は高等教育ジャーナル第11号に掲載されているので,参照ください。
(理学研究科・理学部)
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