訃報
名誉教授 大里 外譽郎(おおさととよろう) 氏(享年70歳)
名誉教授 大里 外譽郎(おおさととよろう) 氏(享年70歳)

 名誉教授 大里 外譽郎 氏は,入院加療中のところ,平成14年4月18日午後5時34分,御逝去されました。
 ここに,先生の生前の御功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,昭和6年5月8日石川県に生まれ,昭和32年3月東北大学医学部医学科を卒業し,昭和33年3月同学部附属病院において1年間の実地訓練を修了した後,同年4月より東北大学大学院医学研究科に入学し,昭和37年3月同研究科を修了,「パラミクソウイルスの潜伏感染に関する研究」により医学博士の学位を授与されました。引き続き,昭和37年4月から同38年3月まで日本学術振興会奨励研究員として東北大学医学部細菌学教室においてウイルスの潜伏感染を研究された後,同38年4月から2年9カ月,ニューヨーク州立ロズウェル・パーク記念研究所研究員として,腫瘍ウイルス学,特にマウス白血病ウイルスについて研究されました。昭和40年10月からは愛知県がんセンター研究所室長(ウイルス部ウイルス第2研究室)として引き続き腫瘍ウイルス学を研究,同43年1月に北海道大学医学部附属癌研究施設に新設されたウイルス部門の教授に就任以来27年間にわたり,主として腫瘍ウイルス学の研究とウイルス学全般の教育・研究に従事され,平成7年3月に停年により退官,同年4月北海道大学名誉教授の称号を授与されました。さらに同年同月北海道医療大学教授に就任し,平成14年3月に退職されるまで,私学の教育に尽力されました。
 同氏の研究活動は終始ウイルス学についてなされました。東北大学医学部細菌学教室での5年間は,インフルエンザウイルスとパラインフルエンザウイルスの宿主細胞への侵入機構・増殖機構及び潜伏感染機構を主として研究され,米国ロズウェル・パーク記念研究所では,マウス白血病ウイルスの試験管内培養及び試験管内発がんに初めて成功されました。さらに,愛知県がんセンター研究所では,パピローマウイルスの試験管内培養を初めて可能にされました。
 昭和43年に北海道大学に移られてからは,主としてEBウイルスに関して研究されました。同氏のEBウイルスに関する主要な研究は,北海道大学赴任当初のEBウイルスの潜在と発現を中心とする国際学術諸雑誌への報告,次いで,この潜在EBウイルスのヒト染色体局在部位の同定に関する学術誌への報告であり,いずれも高い評価を得られました。在任10年以後はEBウイルスの臨床的側面の研究に専心され,本ウイルスが伝染性単核症を発症後の免疫不全をリスク因子として悪性B細胞リンパ腫を誘起すること,原発性免疫不全症において遺伝素因をリスク因子として同様に悪性B細胞リンパ腫を生じることを明らかにされました。また,アフリカのバーキットリンパ腫の原因究明にも奔走されました。
 以上のEBウイルス発がんを中心とする一連の研究に対して,昭和58年北海道医師会賞・北海道知事賞,昭和63年野口英世記念医学賞,平成7年北海道科学技術賞を授与されました。また,多年の優れたウイルス学研究により,国際比較白血病学会理事,国際EBウイルス学会理事,日本ウイルス学会会長等を歴任され,ニューヨーク科学アカデミー会員,日本癌学会功労会員にも選出されました。一方学内にあっては,医学部附属癌研究施設長を通算5期,平成2年4月から同4年3月まで北海道大学評議員を歴任され,大学の運営に寄与されました。また,担当する癌研究施設ウイルス部門の門下から5名の医系大学教授が誕生しており,研究者教育にも貢献されました。
 以上のように,同氏はウイルス学分野においての研究で優れた業績をあげるとともに,学生の教育,人材育成等我が国の学術進歩に貢献されました。
 ここに,先生の御冥福を心よりお祈り申し上げます。

(医学研究科・医学部)