このたび,本学大学院工学研究科教授岸浪建史氏が経済産業大臣表彰(工業標準化事業功労者)を受賞されました。この表彰は,我が国の工業標準化事業の発展のために多大の貢献をした功労者を顕彰するものです。
受賞に当たっての同氏の感想を紹介します。
岸 浪 建 史(きしなみたけし) 氏
私はISO/TC184(Industrial
Automation Systems and Integration)/SC4(Industrial Data)会議に1985年に参加して以来17年間にわたり,製造業の自動化・情報化に関するデータの国際規格(ISO10303)制定およびJIS規格制定(JIS
B-3700)に係わってまいりました。国際規格開発と研究は全く無縁のように見えるのですが,最近の国際規格は研究開発型規格または先取り型規格として位置付けされ,技術が普及する以前に技術体系を整える事が要求され,研究開発要素が非常に強くなっております。そのために多くの大学の研究者も規格開発に参加しております。規格とは無駄な競走を避け,より創造的作業に技術者を振り向ける仕組みであり,知的所有権制度と対極の位置にあります。その制定においては,最も論理的正当性のあるものをただ一つ規格として制定するための文書作成手順,審議手順等,そうして各国と企業の思惑が交差する雰囲気の中での激しい議論を通して国際規格が作られる体験は,大学では学ぶことができない多くの事を学ぶことができました。参画した規格開発において,製造業の自動化,システム化を可能とする情報技術およびデータ工学に関して学識経験者として審議に参加したわけですが,その内容は技術情報・産業データの意味と意図をどのように表現するか,情報の共有と解釈の一意性を国際的に確保するための技術開発です。幸いにして,研究室にはISO10303(STEP)規格開発に必要な検証作業,適用事例を研究テーマに取り上げ研究を推進するスタッフ,大学院生に恵まれ17年間にわたって研究を続けることができ,今回,経済産業大臣賞を受賞できたことは研究室全体としての受賞であると思っております。
(工学研究科・工学部)
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