訃報
名誉教授 大林 正士(おおばやしまさし) 氏(享年77歳)
名誉教授 大林 正士(おおばやしまさし) 氏(享年77歳)

 名誉教授 獣医学博士大林正士氏は,平成14年10月15日午後11時27分,札幌市山の上病院において,腎不全のため逝去されました。
 ここに生前の御功績を偲び,慎んで哀悼の意を表します。
 同氏は,大正14年2月19日宮崎県児島郡高鍋町に生まれ,昭和22年9月に北海道帝国大学農学部畜産学科を卒業後,昭和27年9月同大学大学院特別研究生を修了し,その後,昭和27年10月北海道大学獣医学部助手,昭和29年4月同講師,昭和30年5月同助教授,昭和50年12月から同教授に任ぜられ,昭和63年3月停年により退官されるまで14年にわたって教授をつとめ,同年4月に北海道大学名誉教授の称号を授与されました。退官後は,昭和63年4月から平成7年3月まで酪農学園大学教授として家畜寄生虫病学の教育に貢献されました。
 同氏は,エキノコックス(包状虫),施毛虫,住血線虫などを含む人畜共通寄生虫に関する研究と寄生虫系統分類学に優れた業績を残し,人畜共通寄生虫に関する研究では,特に「多包虫の中間宿主体内における発育像の解析」を重点課題とし,ハタネズミなどの8種の齧歯類と15系統のマウスを用い,発育像と比較検討し,その結果,ハタネズミ類と一部マウスにみられる包虫の発育が速く,原頭節が2か月前後で形成され,宿主組織反応が軽く,好適中間宿主におけるものである第一型と多くのマウス系統やヒトにみられ,逆に非好適の場合で,発育が遅く,シストが小さく,原頭節形成に五か月以上を要し,宿主反応が強い二型の二つに区別されることを明らかにしました。また,寄生虫系統分類学では,ネズミ腸間膜寄生種タイ住血線虫などの多数の新属・新種を含む線虫類を発見し,これらの業績により,家畜寄生虫病学分野における発展にとどまらず家畜並びに野生動物を介して人体へ感染する寄生虫の防除に対して多大な貢献をされました。
 学内においては,昭和54年6月から昭和56年5月まで評議員として,また,学生部委員会委員,文部省在外研究員候補者選考委員会委員,創基百周年記念事業実行委員会専門委員,学部紀要編集委員長等として,本学の管理運営及び本学部の発展に貢献されました。
 学外においては,日本寄生虫学会評議員及び小泉賞選考委員,日本獣医学会評議員等の学会役員歴任し,昭和60年度には日本寄生虫学会長として昭和61年6月,第55回全国大会を札幌で開催するなど学会の発展に尽くされる一方,獣医師免許審議会専門調査員や長期間にわたって北海道エキノコックス症対策協議会委員と務めたほか,寄生虫学雑誌Helminthological Abstracts Veterinary Parasitologyや北海道獣医師会雑誌の編集に携わるなど獣医学教育のみならず広く関連分野でも活躍されました。
 以上のような功績により,平成14年10月勲三等瑞宝章を授与されました。
 このように,同氏は家畜寄生虫病学の分野において学術研究に優れた業績をあげるとともに,多数の後進の指導育成に尽力され,永く学術の進歩発展に多大な貢献をされました。
 ここに先生の御冥福を心からお祈り申し上げます。

(獣医学研究科・獣医学部)