2003年7月5日に,雪の研究で世界的に有名な故中谷宇吉郎と故孫野長治両北大理学部教授を記念したスペシャルセッションがIUGGで企画されました。このセレモニーは,現トロント大学教授であり両教授とも親交の深かった,ローランド・リスト教授が,IUGGが札幌で開催されるのを機に,両教授を輩出した本学をIAMAS(気象・大気科学国際協会)が中心になって称えたいとの強い希望で実現しました。
世界で初めて「人工雪」を作ることに成功し,雪博士として有名な中谷教授は,それ以外にも霧,氷河,凍土,氷の物性などに関係した先駆的な研究を数多く行い,現在の低温科学研究所の設立に尽力されました。北大構内には,その業績を称えて「人工雪発祥の地」という記念碑が旧低温研の跡地に建てられています。中谷教授はまた,数多くの講演・映画・書物を通じて一般市民に対しても自然科学の楽しみを伝えた偉大な文化人でもありました。
一方,孫野教授は同郷(石川県)の中谷教授に憧れて北大に入学し,彼の指導の下気象学を勉強し,その後,雲物理学の泰斗として世界的に有名となり,降雪機構や雷に関して大変優れた研究を行いました。研究姿勢は現場主義を貫き,それは今に続く北大の気象学教室の伝統となっています。
7月5日のセレモニーでは,IUGGを代表して河野会長,国際水文学会を代表してミカエル・クーン教授(インスブルック大学),本学からは中村総長と本堂低温研所長から祝辞を頂きました。祝辞の後は,ジョン・ハレット教授(リノ砂漠研究所)が薄膜の上に雪結晶が成長する様子を実演しながら「複雑な雪結晶」というタイトルで,次に,孫野教授の後に本学理学部教授となった菊地勝弘名誉教授(現:秋田県立大学)が「中谷・孫野教授−雲物理の開拓者−」というタイトルで,両教授の業績を貴重な写真を織り込みながら記念講演を行いました。参加者は,中谷教授の御令嬢である中谷芙二子さんを初めとして150名を越え,大変盛会でした。その後,昼食会を兼ねたレセプションを行い,40名ほどが本学総合博物館(ちょうど中谷宇吉郎研究室復元展示公開記念講演会が開かれていた)と低温科学研究所の見学ツアーに参加しました。
最後に,本セレモニーへの参加を快諾していただいた中村睦男総長,及び関係各位に厚くお礼申し上げます。
(低温科学研究所)
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