部局ニュース

教育学部,高校生の一日体験入学実施

10年目を迎えた教育学部高校生一日体験入学
 今年も8月に予定されているオープンユニバーシティに先行して,6月21日(土)に教育学部では道内の高校生を対象にして「高校生の一日体験入学」を実施しました。平成6年(1994年)に開始してから今年は記念すべき10年目になり,多くの高校でも知られる行事の一つとして,この日は33校192名の参加がありました。内訳は,札幌市内の学校が20校と最多なものの,遠くは網走,帯広,旭川,苫小牧,室蘭などの高校からも参加があり,札幌近郊の高校とともに,一日体験入学の機会を楽しみました。全体会場の,文系共同講義棟8番教室には,受付開始前から参加者が続々と集まり,定刻通り9時10分にプログラムが始まりました。最初に逸見教育学部長,さらに姉崎社会交流委員会委員長,かつてこの一日体験入学を体験した石井良美さん(4年生)のそれぞれの歓迎のあいさつの後,所教授の「北海道大学教育学部の教育と研究の特徴」のオリエンテーションが行われ,その後に,教育・心理学系4コース,教育・社会科学系2コース,教育・基礎論系2コース,スポーツ・健康科学系2コースの計10コースに分かれての模擬講義,実験,演習などを行いました。主なタイトルを掲げると,障害児臨床心理学−障害のある子どもについて考える,発達心理学−あそびの発達心理学,教育臨床心理学−精神障害者の暮らしと生,視覚の心理学−見ることの不思議,社会教育学−学校以外での大人の学び,教育福祉論−貧しさって何,教育の歴史=cd=ba52かつて子どもが最も大事だと教わったこと,教育の方法−数学の授業づくり,他に健康科学,体育方法の講義がありました。今年は,文系の新棟も利用して,会場設定も多様な形態をとり,各コースでの体験教育終了後,再び全体会場に戻り,各コースの内容や方法を参加した高校生の声を通して交流しました。

逸見教育学部長の歓迎のあいさつ
逸見教育学部長の歓迎のあいさつ
道内各地から教育学部一日体験入学に参加した高校生たち
道内各地から教育学部一日体験入学に参加した高校生たち
「一日体験入学」を経験した石井良美さん(教育学部4年生)のあいさつ
「一日体験入学」を経験した石井良美さん(教育学部4年生)のあいさつ


高校生の感想から

 次に,全体会場でのマイクを通した発言や,感想文を通じて主だった高校生の声を紹介しておきます。参加者の構成は,1−3年の全学年に及び,教育学部を第一志望とする高校生も少なからずあるものの,大半はまだ,進路が未定であり,あるいは北大の他学部などを進路に希望していると答え,この一日体験入学が早い段階での教育学部だけではない北大全体への進路志望の動機付けになっていることを示していました。
 10コースに分かれての体験入学では,話が硬くて難しいであろうとの狭いイメージや先入観が打ち破られ,専門的な実験器具を用いた演習,ワークショップ型演習,ゲームを取り入れた講義,ビデオやプロジェクターを用いた視聴覚講義,簡潔で含蓄あふれる講義などに,教育学部の奥深さと研究の多様性を感じ取った高校生の声が多くあり,志望意識が高まったという声も聞かれました。
 「まさか,北大に来て鬼ごっこをするとは思わなかった。最初は恥ずかしくて,人ともギクシャクしていたのに,一緒に遊んでいるうちに真剣に遊び,楽しんでいる自分に少し驚きました。それと遊び方を変えていくうちに,自分が逃げるだけじゃなく,人を逃がすために自分がおとりになったり,時間かせぎをしたり,作戦を変えたりと遊びでも色々と考えているんだなと思いました。発言したりするのは苦手なほうなんですが,遊んでいるうちに結構話をしていたのに驚きました。遊びというのは人とのコミュニケーションでもあるのだなと思いました……。」,「貧困についてのゼミだったが,普段目をそらしていることを考えた。目をそらすことは,楽だがそれではいけないと思った。人命にかかわるほどの大問題になっているとは思わなかった。…」「教育学部に進むことは,先生を目指すことだと今まで思っていたけれど,今回体験入学に参加してみて,教育学部に進んでも色々な内容があることが分かった。私が参加したコースでは,いかに分かりやすく授業を行っていくかということをしたが,小中学校ではこれからはああいった体験を通して発想をふくらませていく授業が大切なんだと思う。…」「今回この体験入学に参加したことによって,教育学部は人間に関することを幅広く学ぶことができると知って驚きました。私は,今回健康科学のコースで生活習慣病について学びました。」「私は小さい頃からスイミングスクールに行ったりして水泳は得意な方だったけど,泳げる人の方がおぼれて死にやすいと言うことにおどろいて,その理由も分かった。「ドル平泳法」もやってみたいと思ったし,水泳について考え方が変わった。…」「見ることの不思議を実感しました。そこにある物を見る事ってすごく単純なことのように思えたけれど,脳が補って見えているなんてすごいと思いました。…」「戦争という極限に近い状態において,子どもというものがどう生きるのか。洗脳に近い状態で植え付けられた教育勅語がどれほど子どもの人間としての尊厳なり幸福なりを破壊していったのか…貴重な体験になりました。」「障害者の臨床心理のことをやりました。私は作業療法にも興味があったけれど,教育学部でそういうことができるなんて知らなかったので驚きました。」「・・特に現在通っている先輩たちから教えてもらったことが一番ためになりました。私のコースでは,目をつぶって渡された物を当ててみたり,耳をふさいで何を言っているかを当てたりととても楽しかったです。北大のイメージは皆,一生懸命勉強しているというイメージが強かったけれど,実際にコースを体験してみて難しいっていうよりも,楽しいから勉強しているんだなと思いました。外からじゃよく分からなかったけれど,今回来てみて自分が興味あることを追求しているんだなと感じました。ぜひ北大で勉強してみたいです。」
 以上は,感想文のごく一部を抜粋したものです。高校生達の知的探求心や関心の一端が伺われ,実施した側にとっても参考となるものでした。全体会場のまとめのセッションでは,臨床心理士や教職で取れる資格関連の質問,入試の方法などの質問も出されました。感想文にも示された率直な高校生の関心や希望など,高校生の声を生かしながら,8月のオープンユニバーシティをはじめ,これからの事業に取り組みたいと考えます。

(教育学研究科・教育学部:社会交流委員会)


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