訃報
名誉教授 吉田  宏(よしだひろし) 氏(享年70歳)
名誉教授 吉田  宏(よしだひろし) 氏(享年70歳)

 名誉教授 工学博士 吉田 宏氏は,胆道癌にて病気加療中のところ,平成15年6月19日(木)安らかに御逝去されました。ここに先生の生前の御功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 先生は,昭和8年6月7日樺太に生まれ,昭和31年3月に京都大学工学部応用物理学科を卒業,昭和33年3月に同大学大学院工学研究科修士課程を修了された後,昭和35年に同大学院工学研究科博士課程に入学し,昭和38年に修了されました。スウェーデン王立工科大学研究員,京都大学原子炉実験所助手を経て,昭和44年9月に北海道大学工学部工業物理化学講座助教授に就任されました。昭和48年6月に同講座教授に昇任され,物理化学関連諸教科の講義を担当されるとともに,学生の研究指導にあたり,多くの技術者,研究者を育成されました。平成5年から2年間北海道大学評議員を務められ,平成7年からエネルギー先端工学研究センター長を,平成8年から北海道大学附属図書館長を務められました。平成9年に停年退官後,引き続いて旭川工業高等専門学校校長に就任され,平成14年に定年退職されました。
 先生は本邦における放射線化学研究のパイオニア的存在で,その専門は,高分子化合物などに放射線を照射した際に生じる化学反応の研究でした。放射線化学反応はゴムや高分子の架橋に広く用いられていますが,先生の研究は,これらの加工法や製品の物性に対する学術的基盤を確立するものとなっています。これらの業績に対し,昭和59年に日本化学会から日本化学会第1回学術賞が,平成8年には高分子学会から功績賞が,また平成13年には北海道から北海道科学技術賞が贈られています。
 先生はまた日本放射線化学会会長や日本化学会,高分子学会の北海道支部長など,各種学会の委員長等の要職を歴任され,学術の発展に多大な寄与をされました。専門分野での国際交流以外にも,北海道,ポーランド間の学術・文化・芸術交流を目的とする北海道ポーランド文化協会の設立に初代事務局長として奔走され,本道の民間国際交流進展に多大な寄与をされました。これらの業績に対し,平成14年にポーランド,ウッジ工科大学から名誉博士号が贈呈されています。また生涯を通じて合唱を愛され,合唱団のテノールとして,また響友会,札幌放送合唱団の代表として活躍されました。
 生前の先生の活動は多岐にわたっていますが,これを貫くものは,文化の担い手としての使命感ではなかったかと推察されます。このように,教育・研究のみでなく文化面でも多彩な活動をされた先生を失ったことは痛恨の極みです。ここに先生の御冥福を心よりお祈り申し上げます。

(工学研究科・工学部)