寄稿

国際教育交流担当職員長期研修に参加して

総務部国際交流課国際企画掛 梶 本 宏 円

 始めに
 平成14年6月15日から平成15年6月1日のおよそ1年間,国際教育交流担当職員長期研修(Long Term Educational Administrators Program)の研修生として,私はアメリカ合衆国に滞在しました。本研修の目的は,語学研修及び国際企画や国際交流業務等に関する研修を実施することにより,当該職員の資質向上を図り人材養成に資するとともに,各機関の国際競争力の強化等を図ることとなっております。平成14年度は,全国の文部科学省所管大学及び研究機関から13名の事務官が派遣されました。平成9年度から実施されているこの研修には,これまで私を含め4名の事務官が本学より派遣されております。
 研修実施地は前期半年,後期半年で異なり,前期半年は研修生全員がモンタナ州立大学で研修を行い,後期半年は全米各地の大学にひとりずつ分かれて実務研修を行うという形になっており,私は後期半年の研修地としてカリフォルニア大学デービス校に派遣されることになりました。

 モンタナ州立大学
 モンタナ州は,米国北西部に位置し,北はカナダ国境,南はイエローストン国立公園,西はロッキー山脈と,大自然に恵まれた州として有名です。面積は日本とほぼ同じであり,主要な産業は農業,畜産業,林業と,北海道に産業構造が似ております。その南部中央付近に位置するボーズマンという人口3万人の小さな都市にモンタナ州立大学のメインキャンパスはあります。人口の半分以上は大学関係者で占められ,全米でも屈指の白人社会として90%の住民は白人系です。モンタナ州立大学の学生数は約1万2千人で,学部学生数は約1万7百人と,本学とほぼ同じ規模です。学部は農・芸術・建築・工・文理・教育・看護を擁する総合大学です。

 語学研修
 半年間の語学研修が行われたのはモンタナ州立大学に隣接するACE(American Cultural Exchange)という英語学校でした。全米に4箇所,オーストラリアに1箇所の支部を持つこの英語学校は,非営利組織であり,大学と非常に密接した関係を持っております。この学校で定められた英語コースを修了した者は留学生に義務付けられる入学時のTOEFLを免除されるという制度があり,各国からの留学生にとって,まずこの英語学校に入学することが留学の第一歩というのが一般的でした。生徒数はおよそ30名で,日本人,韓国人が圧倒的に多いというのは,全米各地でよく見受けられることです。
 7月からは大学院の授業を受講することとなったのですが,内容が教育者のリーダーシップに関するもので,小学校や中学校の教員を対象としたものであり,研修内容とかなり相違がありました。しかし,毎日数十ページの専門書を読み,コメントを提出しなくてはならないなど,聞いていたとおりのアメリカの大学の授業の厳しさを経験できたことはとても貴重だったと思います。
 9月からの語学研修は,研修者のみを対象としたコースとなっており,地元の小学校での日本文化紹介の授業や,大学の学生会館で日本文化に関するプレゼンテーションを行うなど,バラエティに富んだ授業が行われました。また後述するコロキアム(講習)の補足として,専門的な語彙の説明や,説明資料の読解なども行われました。

箸の使い方講習会 日本食パーティ
箸の使い方講習会
日本食パーティ


 コロキアム
 9月から12月にかけては,毎週金曜の午前中にコロキアムと呼ばれる講習が,モンタナ州立大学国際課主催で行われ,学内学外問わず様々な講演者より,アメリカの高等教育に関する講義を行っていただきました。アメリカの州立大学の制度は日本と大きく異なっているものの,これから日本の大学が変わっていく中で見本とすべき点がたくさんあることを学ぶことができ,非常に有意義なものとなりました。

 職場体験
 9月からは週数時間程度,モンタナ州立大学国際課でインターンシップを行いました。監督は国際課長の秘書で,業務は幅広く,個人個人の仕事の領域がきっちりと決まっているといわれるアメリカにおいては,例外的に様々なことを課内の人々が協力して行っておりました。語学の問題があり,アメリカ人同様には働くことはできず,私の業務はコピーから,インターネットを利用した調査,広告作りなどの簡単な業務を行い,アメリカでの職場に慣れるという意味合いが大きかったです。インターンシップ中の昨年12月には,国際課長と副学長が本学を訪問することになり,その連絡調整及びアドバイスなども行いました。農学研究科との研究者交流がすでに確立されていたことから,今後の新たな協定の可能性を探るのが目的だったのですが,具体的な結果が出されれば良いと思っております。

 UCデービス
 1月から実務研修先として,カリフォルニア州立大学デービス校(UCデービス)に派遣されることとなりました。UCデービスはカリフォルニア州都のサクラメントより車で30分ほどの人口6万人のデービス市に位置し,サンフランシスコへも2時間ほどと大都市近郊に位置しております。モンタナ州立大学と大きく異なるところは,アジア系学生が圧倒的に多いということであり,その割合は,モンタナ州立大学で1%のところ,UCデービスでは40%近くにのぼります。アメリカ国内におけるアジア系国民が3%強,カリフォルニア州におけるアジア系住民が11%弱と比較するとその割合は非常に特異であると言えます。また,UCデービスは10校あるカリフォルニア州立大学の中でもUCLA,UCバークレーの次に学生数が多く約2万9千人が在籍しており,キャンパスの大きさではトップを誇ります。もともとは農業専門大学として設立され,周辺のコミュニティに大きな影響を及ぼしてきたという点は本学に似ております。学部構成は医学部,農・環境科学部,獣医学部,工学部,文理学部及びロースクール,ビジネススクールなどと多岐に渡りますが,カリフォルニアワインの里であるナパやソノマの発展はUCデービス無しではあり得なかったと言われるほど,ワインに関する研究が盛んな大学として有名です。

 インターンシップ概要
 UCデービスでのインターンシップは国際交流担当副学長補佐のもとで行われました。学長の部屋がある5階建ての事務局建物の一室とパソコンを与えられ,主にインターネットを利用した調査を行うことになりました。具体的には,国際関係担当部署を一箇所に集中させたインターナショナルセンターをUCデービスに立ち上げるために,すでにそうしたインターナショナルセンターを持っている大学に対してアンケート調査を行うための準備や,同窓生に対するサービスを充実させる準備として,同窓生のためだけの講義(Alumni College)を実施している大学を検索し,リスト作成などを行いました。また,アメリカ政府の出資する事業であるハンフリーフェロープログラム参加者との交流を通して,発展途上国への教育支援のあり方やプログラムの実施方法を学ぶことができました。

 北大からの訪問
 4月の中旬に,本学から4名の先生がUCデービスを訪れ,学生と研究者の交流について非公式の話し合いが行われました。昨年10月に本学に滞在し,国際交流に関する提言をくださった柴本教授にお会いする機会もあり,北大卒でUCデービスの名誉教授であり,2001年にはノーベル賞に匹敵すると言われるストックホルム水賞を受賞した浅野教授に貴重なお話を聞かせていただく機会もありました。そもそもUCデービスは歴史や研究分野で本学に非常に良く似ており,今までも研究者の交流は活発に行われていることから,協定を結んでいないのが不思議なくらいだと思っていたところの訪問であり,今後の進展が楽しみです。

 研修を通じて
 この研修を通じて学んだことは数えられないほどありますが,今後,本学に取り入れることができるのではと考えたことを二点挙げたいと思います。
 アメリカの大学で働き,最初に気づいたことは,どのオフィスにも学生アルバイトがいるということでした。特に留学関係の部署では留学を経験した学生がオフィスを訪れる学生に対してアドバイスを行い,説明会を開くなど効果的な役割を果たしていました。モンタナ州立大学の留学担当者によれば,マーケット戦略上もこうした経験者による説明は最大の効果が出るものであると位置付けられており,UCデービスにおいては,さらに人件費の面でも1.5人の正職員を雇う費用と10人の学生を雇う費用が同じくらいであるということで財政面でもプラスとなっているということでした。チューターなどのアカデミック部門でのアルバイトは日本でも一般的ですが,スタッフとして行政部門において学生を雇い入れることは,学生にとっても良い就業体験であり,学生部や学部の窓口担当ばかりが学生と接する大学事務にとっても良い効果が期待でき,これから大学として大いに支援すべきことではないかと思われました。
 もうひとつは,大学の地域への貢献度合いの違いです。アメリカの大学,とくに州政府から敷地の供与を受けて設立されたLand Grant Universityと呼ばれる州立大学は,教育・研究によって地域に貢献することが重要な使命のひとつとなっており,地元企業との共同研究や市民に対する公開講座が充実しています。生涯教育に対する考え方や,高等教育をキャリアアップの手段と考える点は,日米で大きな差があることも大きな要因だと思われますが,質・量ともにアメリカの大学の地域への貢献の度合いは日本と比べものにならないほど高いと思います。今後少子化の影響で,学生数が大幅に減少することが明らかであるなか,学外専門の窓口を一本化した組織を立ち上げ,教育の対象を広く一般市民に向けるよう,生涯教育の理念の普及,公開講座の拡充などを推進していくといった取り組みをし,学生数の減少を穴埋めしていかなくてはならないのではないかと感じました。

 終わりに
 今回この記事を掲載していただくに当たり,特に若手事務官の方にこうした研修があることを知ってもらい,今後も本学からの参加者が続くよう希望しております。
 最後になりましたが,この1年間で学んだことをこれからの職務に生かせるよう努力していきたいと思います。また,研修を受講させてくださった北海道大学,文部科学省,モンタナ州立大学,カリフォルニア大学デービス校及び多くの関係者の方々に御礼申し上げます。


前のページへ 目次へ 次のページへ