訃報
助教授 野村 真紀(のむらまき) 氏(享年35歳)
助教授 野村 真紀(のむらまき) 氏(享年35歳)

 法学研究科政治学講座助教授 野村真紀氏は,病気療養中のところ,本年9月20日御逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,昭和43年4月18日に生まれ,平成3年3月東京大学法学部第三類(政治コース)を卒業,平成5年3月東京大学大学院法学政治学研究科修士課程を修了,平成7年3月に同研究科博士課程を単位取得退学した後,平成7年4月北海道大学法学部助教授に採用され,平成12年4月より北海道大学大学院法学研究科助教授に就任しました。
 同氏は,近世日本朱子学の政治思想,とりわけ中井履軒を中心とする大阪懐徳堂の政治思想の研究でデビューし,中井履軒の政治思想を「通人からのユートピア」思想として明らかにされ,日本における代表的な懐徳堂研究者として海外でも名を知られるようになりました。次いで,大阪の堂島米市場を研究対象に取り上げ,近世日本における市場社会の前期的形成を,「神の見えざる手」が働く過程として解明するとともに,本学の中国文学研究者の方々と一緒に,曹洞宗の萬松行秀による『従容録』に訳注を付する共同研究に加わりました。続いて,『日本開化小史』を初めとする田口卯吉の初期思想,近世町人思想と易的世界観との関連,石門心学者と近世禅家の思想交流といった研究テーマに精力的に取り組まれました。この間,近世日本儒学史を中心として日本政治思想史の体系的通史を教授されるとともに,演習その他の機会に学生たちに親身にきめ細かい指導をしてくださりました。特に本年5月からは,文部科学省の内地研究員として東京大学大学院法学政治学研究科にて近世仮名法語の政治思想的研究に携わるとともに,7月には日韓学術シンポジウムで「近世日本における儒仏一致論」につき報告され,研究者として充実した時期を迎えようとしていた矢先,突然の御逝去の報でした。わが国における日本政治思想史研究の輝かしい伝統を担うべき有望な若手研究者を失ったことは,本学ばかりか,日本の政治学会,思想史学会にとり多大な損失であり,痛切の念を禁じえません。
 ここに本学の研究教育に対する生前の御貢献を偲ぶとともに,御冥福を心からお祈り申し上げます。

(法学研究科・法学部)


前のページへ 目次へ 次のページへ