去る12月5日,北海道大学公開講演会を本学学術交流会館において,約70名の学内や札幌市民の参加を得て開催しました。本講演会は北海道大学らしさを創出するため環境整備事業の一つとして,ノーベル賞受賞者など文化人等による講演を行っているものです。このたびは,走査トンネル顕微鏡(STM)の発明によって1986年にノーベル物理学賞を受賞されましたハインリヒ・ローラー博士をお招きしました。博士の講演に先立ち中村睦男総長からあいさつとともに本講演会の趣旨,ローラー博士と本学の関わり(博士は1995年,1999年に引き続く3回目の来学)について紹介がありました。特に,博士の発明された顕微鏡については,「人類数千年の夢であった原子1個1個を直接観察・操作できるもので,現在では,ナノメータスケールの科学とテクノロジーに欠かせないツールであるだけでなく,新産業創出のキー技術ともなっています。その原理的新鮮さとともにその応用の広さが高く評価され,1986年のノーベル物理学賞を共同研究者のビンニッヒ博士とともに受賞されたと聞いております。」と紹介されました。また,「博士の発明された顕微鏡は,北海道大学のほとんどの実験系の研究室に備え付けられ,日夜動いており,博士の発明があってこその研究成果が数多く出ているところです。」とも述べられ,博士に感謝の意を表されました。
ローラー博士は「The Magic of Small: Nano-technology(極微細の魔術:ナノテクノロジー)」と題して,物を小さくすることの魅力,有益性,さらにはその究極のナノスケールのまったく新しい世界について分かりやすく講演されました。「企業買収や吸収合併など巨大化してゆく世界で,小さくあることの魅力とは何だろう?」「小さく,より小さくという小型化を目指した欲望が,マイクロエレクトロニクスのサクセスストーリーを作り上げた。しかし,ナノテクノロジーがもたらすものはこれだけではなく,超高速・高感度・超極小エネルギーで動作するデバイス分野を拓き,過去にマイクロテクノロジーがもたらしたより多くの革命的技術変化をもたらすだろう。」と熱っぽく説かれました。
ローラー博士の講演に引き続き,本学のナノテクノロジー分野の若手教官(電子科学研究所 小林亮助教授,理学研究科 グン剣萍教授,電子科学研究所
居城邦治助教授,工学研究科 末岡和久助教授)が最近の成果を分かりやすく紹介しました。講演時間は15分程度でしたが,適切な準備・講演で,参加者には十分な理解ができたようで,ナノサイエンス・ナノテクノロジーへの理解を深めることができました。
最後に,ローラー博士の招へいに当たって御尽力いただきました長田副学長,井上副学長にこの場をお借りし深く感謝の意を表します。
(電子科学研究所)
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