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名誉教授 室木洋一 氏は,平成15年12月8日心不全のため御逝去されました。
ここに,先生の生前の御功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
同氏は,昭和2年6月4日北海道中川郡本別町に生まれ,昭和23年3月東京体育専門学校(後の新制東京教育大学に合併)を卒業し,東京大学厚生部,北海道大学農林専門部(教官兼事務職)勤務を経て,昭和26年3月に北海道大学教育学部助手に任命されました。以後昭和30年6月同学部講師,昭和37年12月同学部助教授を経て,昭和48年10月,北海道大学教育学部教授に就任され,平成元年3月に北海道大学を退官,同年4月北海道大学名誉教授の称号を授与されました。さらに,平成元年4月から北海道情報大学教授に任ぜられ,平成10年4月からは同大学特任教授として私学の教育に尽力し,平成12年3月退職されました。
同氏の専門分野は保健体育の専門領域の中,主に発育発達学,体育生理学であり,これを基礎に望ましい人間の発育発達過程に関する諸課題の把握と課題解決のための運動処方の確立を目ざしたものでありました。また,実技教育においては柔道を主とする格技及びトレーニング教育を専門としており,その指導力量の高さは定評のあるところであり,そのような実技教育は同氏の研究にもかなりの影響を与えました。
また,同氏は1960年のローマオリンピックの前年1年間イタリアに留学し日本の柔道の普及に貢献したのをはじめ柔道,空手など日本の武道の発展,武道を通しての人間形成を図りながらローマ留学時に身につけた語学力を生かしてパラリンピックの運営にもボランティアで活躍し身障者の国際交流にも貢献されました。
同氏の研究活動として,幼児の体力の研究や老人クラブ会員のための体操の考案など生涯を通して望ましい発育発達並びに体力維持のための科学研究とともにその具体的処方の確立を推進し,大きな社会的活動と指導的役割を果たされました。この同氏による体力の発達の実践的な研究は,トレーニングドクターを務めた冬季スポーツのボブスレーの競技力向上にも大きな貢献となりました。
大学の運営に関しては, 北海道大学においては昭和52年5月から昭和53年9月及び昭和63年4月から平成元年3月まで体育指導センター所長の要職を歴任し,学生部委員会委員等の各種委員会委員を務められました。また,北海道情報大学においては学生部長を務められ,公私にわたって大学の管理運営にも貢献されました。
また,学生の北海道大学体育会創立に参画し,長年にわたって体育会顧問を務められ,体育会の発展に寄与されました。課外活動における体育スポーツ活動の指導は,北海道学生空手道連盟の会長をはじめ,北海道大学空手部顧問,合気道部などの部活動への指導援助を公私にわたって尽くされ,多くの学生から慕われました。
学外においては,昭和51年4月には全国大学体育連合理事,同北海道理事長を務めるとともに,昭和57年4月には北海道体育学会理事長,同副会長を歴任され,体育における学会の発展並びに大学体育振興の重責を果たされております。
以上のように,同氏は北海道大学及び北海道情報大学の発展に寄与され,学外における教育研究にも大きな指導力を発揮されており,教育・研究を通じて学術振興及び人材育成に多大な貢献されました同氏を失ったことは痛恨の極みであります。
ここに,室木洋一先生の御冥福を心よりお祈り申し上げます。
(教育学研究科・教育学部)
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