北大医系シンポジウム
−アジュバントによる多様な免疫活性化の分子機構− |
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講演中の Dr.Ciechanover |
2月10日北大医系シンポジウムシリーズ第二回として,アジュバント免疫療法百周年記念シンポジウムが開催されました。
アジュバントとは,抗原と共に投与すると抗体産生などの獲得免疫反応を増強する,多くは細菌菌体由来の物質を指します。近年ではアジュバントの作用点は,細菌やウイルスなどの微生物が広く共通して保有する物質に対するレセプターと,その刺激によって活性化される自然免疫にその本体が存在することが明らかになって来つつあります。
今回のシンポジウムでは,天然物質・癌ワクチン・各種微生物が有するアジュバント作用,自然免疫における主役としての樹状細胞,それによって誘導されるNK細胞,NKT細胞,細胞傷害性Tリンパ球,がんのワクチン・アジュバント療法,さらに最近非常に注目されているプロテオーム解析と翻訳後修飾の網羅的解析などが講演されました。
また,目玉として2004年度に"The Ubiquitin Proteolytic System"でノーベル化学賞を受賞されたDr.
Aaron Ciechanoverが特別講演を行い出席者300人以上と大盛況のうちに会を終了できました。
免疫学は,そのもっとも特徴的な非自己を見分ける多様性が研究者を魅了してきたために獲得免疫機構の解析が非常な進歩を遂げてきました。しかし獲得免疫を活性化する目的のワクチンがアジュバントを必要とすることからもわかるように,免疫の認識機構の重要な最初のステップである自然免疫機構の解析の重要性が認識されてきております。自然免疫が分子やレセプターのレベルで語れるようになったのは,近々7年前からで,それまでは「非特異的」な現象として扱われてきました。その理由の一つとして,技術的に解析が困難な側面がありましたが,近年の細胞生物学的・遺伝学的解析法の進歩により免疫現象のファースト・ステップである自然免疫の機構解明が急速に進んでおります。
今回のシンポジウムは急速に進展中の自然免疫研究を第一線研究者たちが様々な角度から,平易な解説,高度な研究内容説明,将来への展望まで美麗なスライドと共に講演され好評を博しました。
プログラム
開会の辞
井上 芳郎(北海道大学理事・副学長)
「免疫系に作用する天然薬物の探索と創薬への応用」
小林 淳一(大学院薬学研究科 天然物化学分野)
「アジュバントの作用機序とワクチン適用への基礎研究」
瀬谷 司(大学院医学研究科 感染症制御学分野)
「新しいMHCクラスIファミリーMILLの構造と機能」
笠原 正典(大学院医学研究科 分子病理学分野)
「自然免疫の構造生物学」
稲垣 冬彦(大学院薬学研究科 構造生物学分野)
"The Ubiquitin Proteolytic System: From a Vague Idea through
Basic Mechanisms and onto Human Diseases and Drug Targeting"
特別講演 Dr. Aaron Ciechanover 2004年ノーベル化学賞(Technion-Israel Institute
of Technology, ISRAEL)
「ユビキチン化とリン酸化に注目したタンパク質翻訳後修飾プロテオーム解析」
畠山 鎮次(大学院医学研究科 分子医化学分野)
「Type1/Type2免疫バランス制御を介した癌ワクチン・細胞治療の開発」
西村 孝司(遺伝子病制御研究所 免疫制御分野)
「動脈硬化症進展過程におけるNKT細胞の役割と意義」
岩渕 和也(遺伝子病制御研究所 免疫生物分野)
「ジアシルリポペプチドFSL-1のToll-like receptor 2による認識とアジュバント活性」
柴田 健一郎(大学院歯学研究科 口腔分子微生物学教室)
「免疫系細胞および癌細胞における新規death receptorシグナルの分子機構と役割」
宮崎 忠昭(遺伝子病制御研究所 分子免疫分野)
閉会の辞
大塚 榮子(北海道大学役員・監事) |
(医学研究科・医学部) |
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