訃報
名誉教授 鳥山 成人(とりやましげと) 氏(享年83歳)
名誉教授 鳥山 成人(とりやましげと) 氏(享年83歳)

 名誉教授 鳥山成人氏は,平成17年2月14日鬱血(うっけつ)性心不全並びに多発性脳梗塞(こうそく)のために札幌市宮の森病院にて逝去されました。ここに,先生の生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 鳥山成人先生は大正10年12月11日に札幌市で生まれ,昭和18年9月東京帝国大学文学部西洋史学科を卒業後,財団法人東亜研究所,財団法人20世紀研究所,財団法人歴史科学研究所,東京歯科専門学校などを経て,昭和23年7月に北海道大学・法文学部助教授として赴任されました。その後昭和28年4月文学部助教授,昭和31年3月法学部助教授,昭和38年4月法学部教授に就任,昭和42年4月法学部附属スラブ研究施設に配置換,昭和44年には文学部教授となられ,昭和60年3月に停年により退官,北海道大学名誉教授となられました。その間先生は北海道大学法学部附属スラブ研究室主任(昭和32年4月〜昭和37年3月),同スラブ研究施設長(昭和37年4月〜昭和42年3月),北海道大学評議員(昭和45年2月〜昭和48年3月),文学部長事務取扱(昭和46年8月〜昭和48年3月),大学院文学研究科長(昭和46年10月〜昭和48年3月)など要職を歴任されました。また昭和52年にはスラブ研究センターの発足に尽力され,同センター発足後は運営委員会委員を務められました。
 北海道大学を停年退官された後は昭和60年4月中央大学文学部教授に就任し,平成4年3月退職されました。
 鳥山先生は北海道大学に赴任以来,37年の長きにわたり,法文学部,法学部,文学部において研究・教育に専心されました。文学部では専門教育の西洋史学,史学概論,西洋史学演習,大学院文学研究科の西洋史学特殊講義,西洋近世史演習,東欧史演習を担当され,多くの学生・院生を世に送り出しました。
 先生の研究分野は西洋史学,とりわけロシア・東欧史学ですが,先生はそれを地域的にも,時代的にも極めて広く捉(とら)え,総合的な視野から研究されました。主題的にも政治,法制,経済,社会,思想,文化と多岐にわたっています。とくに中世ロシアの貴族・身分制議会,農奴制に関する研究は,ロシア・ソヴィエトのみならず,西欧諸国の研究成果をも広く取り入れての本格的なもので,内外で高い評価を受けました。
 著書には,チャアダーエフの思想を分析し,ロシア史の根本問題について明快に論じられた『ロシアとヨーロッパ−スラブ主義と汎スラブ主義−』(昭和24年),我が国初めての本格的ロシア史通史『ロシア史』(昭和31年),スラブ・東欧史を概観された『スラブの発展』,及び『ビザンツとスラブ世界』(昭和43年,同53年),先生の研究の集大成といえる『ロシア・東欧の国家と社会』(昭和60年)などがあります。
 学外においては,昭和49年1月から53年1月まで日本学術会議第十期会員(第一部所属)として研究計画委員会に加わり,学術振興の枢機に参画しました。また史学会,日本西洋史学会,ソ連東欧学会,歴史学研究会の会員,理事,評議員及び北大史学会会長として学界の発展に尽力されました。
 以上のように,先生の研究・教育活動は40余年にわたり,日本における東欧史・スラブ史・ロシア史研究の発展に尽くされた功績は極めて大であります。またその薫陶を受けた研究者も多く,現在各地で活躍しております。東北大学,東京都立大学,琉球大学等の講師をも併任され,他大学における歴史学の研究・教育にも尽力されました。
 教育と研究並びに社会に対する多大な貢献をされました先生を失ったことは痛恨の極みであります。ここに鳥山成人先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

(文学研究科・文学部)


前のページへ 目次へ 次のページへ