科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)主催によるサイエンス・コミュニケーションのワークショップ開催 |
1月23日(月)・24日(火)の両日にわたり,サイエンス・コミュニケーションのワークショップが北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)の主催(コーディネーター:石原孝二,岡橋毅)で行われました。
第1日目は,「サイエンス・エンゲージメントの手法」というテーマのもと,ニューカッスル大学のトム・シェークスピア博士と市民科学研究室の渡部麻衣子さんに,市民が科学にかかわることの意味や方法について話していただきました。
シェークスピア博士が深くかかわっている,PEALS(政策,倫理,生命科学)という組織では,様々な研究教育活動を行っています。たとえば,普通の人々の倫理観を調査するオーディナリー・エシックス(日常倫理)研究プロジェクトでは,遺伝子技術による性の産み分けに関する普通の人々の倫理的な判断や意見を研究しています。そして,科学カフェや視覚アート,文芸や演劇を通して,科学を文化の一部にするための活動を活発に行っています。また,ケンブリッジ大学やグリーンピース,新聞社などとの共同プロジェクトであるナノテクノロジーに関する市民陪審(ナノ陪審)を行い,新しい技術の社会受容に関する研究と実践を行っています。(PEALS http://www.ncl.ac.uk/peals/)
渡部麻衣子さんからは,NPO市民科学研究室の活動紹介をしていただきました。市民科学研究室では,食の総合科学,電磁波,科学館,低線量被爆,ナノテクノロジー,生命操作技術,などの多岐にわたるテーマに取り組んできました。東京タワー周辺の電磁波の調査や食べることについての調査,不妊治療についてのアンケートなど,市民の問題意識から科学技術を見つめ,行動しています。また,こうした活動の延長として,現在,科学技術振興機構(JST)から助成金を受けて,市民が生活者の立場から科学知を編集する方法論や場を築くための研究を行っています。(市民科学研究室 http://www.csij.org/)
第2日目は,「サイエンスカフェ:イギリスと日本の経験」というテーマのもと,イギリスと日本でサイエンス・カフェを行っている方々から,それぞれのカフェについて報告していただきました。
イギリスでサイエンスカフェをはじめ,様々な科学技術のアウトリーチ活動を行っているシェークスピア博士は,講義ではないサイエンスカフェの特徴や,一般の人が専門家に意見や質問を投げかけ,科学の「批判的な友人」になることの大切さや,サイエンスカフェは科学を文化の一部として感じてもらうための活動のひとつであること等を語られました。
また,今までに日本各地で行われてきたサイエンスカフェについて,教育プロジェクトの一環として行っているものから,大学の広報の一環として行っているもの,実践的研究として行っているもの,大学の外でやることに意義を見いだそうとしているもの,バイオテクノロジーに特化して行っているものまで,様々な背景と内容をもつ活動が紹介されました。総合討議では,それぞれの活動の違いを確認し,今後の課題について議論できました。
両日を通して,サイエンス・コミュニケーションが持つ,様々な形や可能性を知ることができ,参加者も話題提供者もお互いに経験を学びあうことができたと思います。本ワークショップは研究者や報道機関,市民の関心を集め,札幌圏や全国からのべ120人ほどの参加を得たほか,ワークショップの様子がNHKニュース(札幌圏)や北海道新聞で報道されました。 |
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ワークショップ開催風景 |
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(理学研究科・理学部) |
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