理学研究科数学COE特任教授 蔵本由紀氏が朝日賞を受賞 |
このたび,理学研究科数学専攻特任教授 蔵本 由紀氏が朝日新聞社より朝日賞を受賞されました。
この賞は朝日新聞が創刊50周年を記念して昭和4年に創設された賞であり,わが国の様々な分野において傑出した業績をあげ,文化,社会の発展,向上に多大な貢献をした個人,または団体に贈られます。同氏の受賞理由は「同期現象などをめぐる非線形科学の先駆的研究」です。
同氏は非平衡開放系の秩序変数の運動に関する研究に従事されています。平衡状態から遠く離れた非平衡状態について,現象論を超える一般論を相転移・臨界現象における種々の展開理論・逓減摂動法・繰り込み群の方法などを下地として振動現象に適用できるように独自の方法を開発され,等方的反応拡散媒質の一様振動場に対して系のパラメーターに依存しない極めて一般的な位相方程式を導くことに成功されました。
この位相方程式は「蔵本―シバシンスキー方程式」として現在広く世界に知られています。
さらに,振動子結合系の一般理論を構築され,局所的に秩序変数が成立すると考えてよい程度の時間スケールの分離があると仮定したときの一般的方法を与えることにも成功されました。これらの方法は力学系の理論などの数学理論に寄与するのみならず,その応用範囲は物性物理・生命科学・医学・薬学など広範にわたっており,複雑系科学・非線形科学の基礎となっています。
同氏は京都大学を定年退職された後,本研究科数学専攻が中心となって行っている北海道大学21世紀COEプログラム「特異点から見た非線形構造の数学」(代表
小澤徹教授)における特任教授として3年前に北大に赴任されました。現在は, 数学専攻と電子科学研究所に所属する数学COEメンバーとの活発な研究活動を通じて,数学COE活動の重要なテーマの1つである非線形物理と数学の融合を推進されています。また,国際研究集会などの組織を通じた国内外の研究者交流や,ご自身の研究成果を広く大学院生向けに講義する「蔵本レクチャーシリーズ」,「蔵本オフィスアワー」を定期的に開催されるなど教育活動にも力を注いでおられます。 |
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蔵本由紀特任教授 |
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(理学研究科・理学部) |
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