去る7月,International Antarctic Institute(IAI;国際南極大学)が正式に発足しました。IAIとは南極に関係した教育と研究を行っている大学,研究機関の世界的なコンソーシアムであり,大学・大学院教育における相互の連携をその目的としています。オーストラリア・タスマニア大学,ドイツ・ブレーメン大学,米・ハミルトン大学,マレーシア・マラヤ大学,ブラジル・パラナ連邦大学など12カ国に及ぶ幅広い地域から17大学が集まり,合意文書に署名しました。日本からは,本学のほかに,総合研究大学院大学と東京海洋大学を加えた3機関がこれに参加しています。この成立を受けて,IAIでは,International
Polar Year 2007/08(IPY 2007/08; 国際極年)の始まる2007年度からの教育コンテンツの相互提供やIAIとしての「学位」認定を目指して,本格的なカリキュラムの整備に着手しました。
本学では,昨年度から文部科学省「大学教育の国際化推進プログラム」の援助を得て,極域科学教育カリキュラムの確立を目的とした「国際南極大学カリキュラムの創設」に着手しました。このカリキュラムは,国際標準としてIAI参加機関でも履修可能なコンテンツとして整備し,広く国際的に提供することを視野に入れています。現在,座学の充実と野外実習の整備の両面から取り組んでいます。雪氷学関係の講義のいくつかについては,標準的教科書の作成や国外からも履修できるようにeラーニングに対応した形に整備するなどの取り組みを進めています。一方,野外実習として,本年度からスイス・アレッチ氷河での野外実習を開始しました。実習は,スイス連邦工科大学からの講師陣も加えて13日間にわたって行われ,環境科学院から15名の学生が参加しました。本年度の後半には,サロマ湖・オホーツク海やバルト海での海氷実習を準備しています。サロマ湖実習についてはタスマニア大学からの講師派遣を予定しています。
IAIは,IPY2007/08における,教育分野でのリーディングプログラム(Leading Program)に選定されています。極地が限られた探検的世界であった「国際地球観測年」から半世紀を経た今,極地から見た地球環境の実像を,次代を担う若者に受け渡すべく,本学の努力が求められています。 |
(低温科学研究所) |
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