名誉教授 氏家雅男氏は,平成18年8月6日多臓器障害のため御逝去されました。ここに,同氏の生前の功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
同氏は,昭和5年5月19日北海道に生まれ,昭和28年3月北海道大学農学部林産学科卒業後,同大学大学院農学研究科(林産学専攻)に進学,昭和33年9月博士課程を単位取得退学し,同年12月同大学助手(農学部林産学科)に採用されました。昭和45年2月農学部附属演習林に配置換となり,同年8月助教授に昇任,昭和61年4月同大学教授に任ぜられました。その後,平成6年3月31日停年により退官され,同年4月北海道大学名誉教授の称号を授与されました。
同氏はこの間,農学部附属演習林において,昭和45年3月から昭和48年4月まで苫小牧地方演習林長,引き続き昭和54年3月まで雨龍地方演習林長を務められ,演習林研究部では,昭和54年4月から昭和58年1月まで林業経営部門主任,昭和61年4月から平成5年12月まで基礎研究部門主任として,演習林の管理・運営及び研究の指導者的な立場から貢献されました。
教育面においては,永年にわたって農学部林学科・林産学科の学生を対象に,森林土壌学,林産学概論,品質管理の講義を,大学院生に対しては,自然保護論と林産学特論を担当されました。また学内では,昭和48年4月から昭和50年3月まで低温科学研究所融雪科学部門助教授に併任され,学生の教育指導にあたられました。
学外においては,日本木材学会北海道支部の創設に尽力され,全国にさきがけて支部会を設立,昭和61年4月から平成6年3月まで理事及び評議員として活躍されました。停年退職後も同支部監事を務められ,木材学会の発展に大いに寄与されました。
同氏は,北海道に広く分布する未利用資源のササの資源化に関して数多くの研究成果をあげ,なかでもササのヘミセルロースの構成糖にはキシロースの他,アラビノース,ガラクトース等が含まれることをはじめて見いだされました。さらに,木化していない成長初期のチシマザサから簡易な方法で,和紙のような感触の紙の製造に成功しました。また,それまで殆ど研究されていなかった森林土壌を分析され,土壌の性質と森林・樹木の成長や材質との関係を明らかにされるなど多大なる功績を残されました。
このように同氏は,教育・研究の発展,後進の啓発と斯学の発展に貴重な貢献をなされました。
ここに,氏家雅男先生のご冥福を心よりお祈り申しあげます。
(北方生物圏フィールド科学センター)
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