北海道大学では,独立行政法人日本学術振興会の科学研究費補助金の研究成果社会還元事業として,今,大学がどのような研究を進めているのか,その一端を知る機会として,中学生と高校生を対象に大学の研究室で日ごろ行っている実験・分析を体験してもらおうと「ひらめき☆ときめきサイエンス〜ようこそ大学の研究室へ〜」を開催しました。
●地球環境科学研究院
9月23日(土)に地球環境科学研究院では,「野外生物学(フィールドバイオロジー)ヘようこそ−野外調査から遺伝子まで−」と題して,中学生と高校生の皆さんに大原雅教授研究室のスタッフの一員として実験や分析を行い,1日研究者になってもらいました。
この日は,中学生 22名,高校生27名および保護者1名の合わせて50名の参加がありました。
はじめに大原教授と日本学術振興会の中島委員からのあいさつがありました。オリエンテーションの後に,参加した生徒たちは6班に分かれ,大原研究室の大学院生のリードにより屋外に出て,中学生はアカツメクサを高校生はササを実験材料として採取しました。実験室に戻ってからは生徒がそれぞれ採取した材料を乳鉢に入れ,液体窒素を加えて乳棒で細かく砕き,ドロドロになった抽出液をチューブに入れ遠心分離機にかけるなど,一人一人すべて自分の手で実験試料を作成しました。
電気泳動実験の結果が出るまでの昼食後の午後の時間帯には大原教授により「大学での研究:あの頃に考えていたことと,そして今考えること」と題して講演があり,大原教授の人生経験も交え,これからの日本の未来を担う中学生・高校生の皆さんが今後の進路を決めるための一助となるべく貴重なお話がありました。
電気泳動終了後にゲルの染色を行い,アカツメクサとササの酵素多型分析に関する考察を行いました。どの班も初めて実験を行ったとは思えないほどきれいなバンド・パターンが見られ,それぞれの植物の生き方を反映した良好な結果が得られました。
クッキータイム・フリートークでは,どうしたらこの研究室に入れるのかといった意見がありました。参加した生徒たちは,最初は緊張した様子でしたが,各班のリード役を行ったお兄さんお姉さんとすっかり打ち解け,話が盛り上がりました。
プログラムの最後の終了式では,大原教授から参加した生徒一人一人に「未来博士号」の修了証書が手渡されました。
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オリエンテーションの様子 |
実験試料の作成 |
●北方生物圏フィールド科学センター
9月30日(土)に水産学部水産資料館と北方生物圏フィールド科学センター臼尻水産実験所を会場に「北海道の魚たち−北の海の研究最前線−」が開催されました。
この日は,函館市内を中心に,青森県や大阪からきた親子など,27人の中高校生と父母が参加し,「北の海の研究最前線」をテーマに,魚と自然環境に関する講演と実習をしました。
午前中は,水産資料館で猪上水産科学研究院副研究院長と,日本学術振興会萩原委員のあいさつに続き,帰山教授の「サケの生活史戦略と物質循環」と題した講演があり,その後市内の大船川にサケの遡上観察に行きました。午後は,臼尻水産実験所に移動し,「魚の生態から知る,環境改変と地球温暖化」をテーマに,スノーケリングによる魚類の行動観察,新型ソリネットによる標本採集と種査定,DNAによる交雑卵の母種判定の3つのコースに分かれ,大学院生の指導に従い,それぞれの課題に取り組みました。初めて経験する実習に,質問を院生に連発しながらも,参加者は最後までやり終え,総長名の「未来博士号」が授与され,帰宅の途につきました。
プログラム終了後に実施したアンケートには,知識が豊富で手際よく進行する院生へのあこがれや懇切な指導に対する感謝の回答も多数ありました。協力にあたった院生にとっても自らの研究・教育者としての資質を磨く良い機会となったようで,参加者と指導する側,双方にとって,とても有意義な1日になりました。
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スノーケリングでの水中観察と磯舟でのソリネットによる標本採集 |
緊張した面持ちでピペットを操る高校生 |
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院生の指導を受けて標本種査定をする中学生 |
修了証書「未来博士号」授与式 |
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