訃報

名誉教授 秦  謹一(はたきんいち) 氏(享年86歳)
名誉教授 秦  謹一(はたきんいち) 氏(享年86歳)

 名誉教授 秦謹一氏は,かねて病気療養中のところ,平成18年8月17日午前2時15分,恵庭第一病院にて肺炎のため,満86歳で御逝去されました。ここに先生の生前の御功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 先生は大正9年5月30日徳島県徳島市に生まれ,昭和20年9月北海道帝国大学工学部機械工学科を卒業し,昭和23年2月北海道大学工学部副手,昭和24年6月文部教官に任命され工学部勤務,昭和28年7月北海道大学工学部講師に任ぜられ,昭和31年7月北海道大学工学部助教授に昇任されました。昭和31年10月に防衛大学校助教授に懇請されて出向され,昭和38年10月同大学校教授に昇任されて機械工学教室工業力学第一講座を担任されました。昭和37年4月北海道大学工学部に機械工学第二学科が設置されたことに伴い,昭和41年4月工学部教授に請われて就任され,以来同学科塑性加工学講座を担任されました。その間,開設間もない工学部機械工学第二学科の整備・教育方針の確立に努力され,同学科の発展と充実に貢献され,昭和59年4月停年により退職,同年同月北海道大学名誉教授の称号を授与されました。
 北海道大学退職後は,昭和59年4月北海道工業大学工学部教授に就任され,材料力学研究室を主催され,昭和61年4月から1年間,北海道工業大学学生部長となられ,学生の教育・指導に尽力し,私学の振興および学生の育成に努められました。平成4年3月には停年により退職され,同年4月北海道工業大学名誉教授の称号を授与されております。
 先生は,本学奉職以来36年の永きにわたり,塑性力学,塑性加工学に関する教育・研究に専念され,学生の教育指導ならびに研究指導に当たり,専門分野における研究者,技術者の育成に尽力されておられました。また,北見工業大学の非常勤講師など,他大学の学生の教育にも当たられております。
 研究面においては,特に数理弾性学を基礎とした三次元弾性問題の研究を行われ,昭和37年2月には,「短直方柱ならびに矩形厚板に関する三次元弾性問題の基礎的研究」により,北海道大学から工学博士の学位を授与されました。その後,三次元弾性論に関して独創的な理論を展開され,異方性弾性体の三次元問題や厚板の面外変形問題,熱応力問題,さらに三次元振動や弾性応力波の問題などといった広汎な分野での開拓的研究を推進されました。また,塑性加工学分野においては,工業的にも極めて重要な摩擦問題を数理的に扱い,現在の塑性加工数値シミュレーションで最も一般的となっているペナルティ型剛塑性有限要素法の基礎概念を確立されました。
 その他,学術審議会専門委員,塑性加工学会評議員,日本機械学会商議員,評議員,論文審査委員,さらに,昭和54年3月から昭和55年2月まで,日本機械学会北海道支部長を歴任され,北海道における機械工学分野の発展に顕著な功績を残されました。
 また,昭和59年4月から平成4年3月まで北海道工業大学工学部教授として学生の教育と研究に従事され,多数の機械工学の技術者,研究者を育成するなど,その貢献は本学にとどまらず,他大学にも及んでおります。
 秦先生のこのような長年の教育研究に対する功績に対し,平成6年には勲三等旭日中綬章を授与されております。ここに先生の御冥福を心よりお祈り申し上げます。

(工学研究科・工学部)


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