名誉教授 高森隆勝氏は,平成18年9月4日午前8時53分に御逝去されました。ここに先生の生前の御功績を偲び謹んで哀悼の意を表します。
先生は昭和2年10月7日京都府で生まれ,昭和26年3月北海道大学理学部化学科を卒業後,同年4月北海道大学工学部助手に採用され,昭和32年12月同講師,昭和34年5月同助教授,昭和43年6月同教授に昇任し,工学部鉱山工学科選鉱学講座を担任されました。昭和47年4月鉱山工学科が資源開発工学科に改称されるに伴い,選鉱学講座から改称された鉱物処理工学講座を引き続き担任し,資源処理学の分野の発展に努力され,平成3年3月に停年により退官されました。また,同年4月には北海道大学名誉教授の称号が授与されました。
先生の本学在職期間は40年の永きにわたり,この間,学部においては選鉱学,粉体工学,分離工学,水処理工学,資源微生物工学,資源論,地球化学など,また,大学院工学研究科においては鉱物処理工学特論,地殻物理化学特論,資源開発工学特別実験,資源開発工学特論ゼミナールなどの講義,実験,演習を担当され,学生の教育指導にあたるとともに,専門分野における多くの技術者と研究者の育成に努力されました。
研究面においては,浮選,液中造粒,鉱山排水処理,バクテリアリーチングなどに関する広範な研究に従事し,この間,昭和36年5月「鉱粒による二液相系の状態の変化と鉱粒の浮遊性等に関する研究」により北海道大学から工学博士の学位を授与されました。
浮選および液中造粒に関しては,転相法による粉体の濡れ性の評価,酸化鉱物・塩類鉱物の界面化学的性状と浮選特性,捕収剤の化学的性質,液中造粒における界面性状と造粒体形成,カラム浮選および液中造粒による石炭の高度脱灰などについて,基礎から応用に至る幅広い研究を行われ,粉体の界面化学的性質,特に粉体の濡れ性の制御に関する研究を基に,湿式粉体処理の分野で新しい技術の開発と展開に努力し,難処理塩類鉱物の新しい選鉱法として吸着・水洗・浮選法を開発され,また微小球形セラミックス製造を液中造粒法の応用により可能にするなどの成果を挙げられました。鉱山排水処理およびバクテリアリーチングに関しては,有機高分子凝集剤による凝集体の生成過程,マンガンイオンの除去,選鉱・選炭工場における用水のクローズド・システム化,鉄酸化バクテリアおよび硫黄酸化バクテリアによる銅・亜鉛精鉱の浸出などについて研究し,資源開発における生産活動と環境保全との調和に努められました。特に,選鉱・選炭工場における用水の循環使用とクローズド・システム化については早くから積極的な提言と現場測定を含む精力的な研究を行い,国内の選鉱・選炭工場で用水の循環使用とクローズド・システム化に対する意欲的な取り組みが始まる端緒を開かれました。「選鉱用水の循環使用に関する実験的考察」の業績に対して,昭和60年4月日本鉱業会より論文賞を授与され,また,「鉱山排水処理対策による鉱山保安の確保」の業績に対して,平成元年5月通商産業大臣表彰を受けられました。
海外との研究交流の面では,昭和38年に研究員としてカナダ国立研究所に留学したのを始めとして,インドネシア科学院,中国有色冶金設計研究総院,北京科技大学,西安冶金建築大学,ニューサウスウエルズ大学などと活発な交流を行い,国際学術協力に尽力されました。
学内においては,北海道大学住宅委員会委員長などを務め,また,工学部においては,各種委員会委員を歴任し,北海道大学と工学部の発展に寄与されました。学外においては,日本鉱業会の理事,評議員,北海道支部長や,通商産業省,金属鉱業事業団,北海道通商産業局,北海道鉱山保安監督局,北海道の各種委員会,協議会,審議会の委員および委員長などを務められ,学術および鉱・工業の発展に貢献されました。
ここに,謹んで先生の御冥福を心よりお祈り申し上げます。
(工学研究科・工学部)
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