薬学部生涯教育特別講座は,同窓生を含む医療関係者および一般市民を対象に,医療における諸問題や薬学,生命科学における進歩について最新の情報を提供することを目的として年1回開催しています。第9回を11月25日(土)に学術交流会館において開催し,市内外から52名の参加がありました。その中には,同窓生だけではなく,本学部や北海道薬剤師会のホームページを見た薬剤師の方の参加も多くありました。
今回は,まず「健康と疾病との関与からみた抗菌ペプチドのはたらき」と題して,本学先端生命科学研究院教授の綾部時芳先生にご講演いただきました。ガマの油の主成分が抗菌ペプチドであることから話を始め,我々の体にも抗菌ペプチドが存在すること,特に消化管等の粘膜に多く存在し,感染防御の第一線で働いていることを示されました。小腸内ではパネト細胞と呼ばれる特殊な細胞より抗菌ペプチドが大量に産生され,小腸内の殺菌作用を行っているとのことです。パネト細胞はクローン病や,嚢胞性繊維症といった難病との関連からも興味が持たれています。抗菌ペプチドに対しては耐性菌ができにくいといった点からも,新しい抗菌薬として期待されています。
次に,同じく先端生命科学研究院教授の菅原一幸先生により,「病気と糖鎖」と題し,御講演いただきました。菅原先生はヘパラン硫酸やコンドロイチン硫酸といった細胞間マトリックス分子の糖鎖構造と機能について永年研究を行っておられます。今回の講演ではこれらの分子の多彩な機能が糖鎖上の硫酸基のパターンと相関があること,これらのパターンを作り出す硫酸基転移酵素とのかかわりについてお話をされました。ヘパラン硫酸は細胞接着や神経繊維伸張とも関連し,その不全と多くの疾患との関連が報告されています。今後の創薬を考えていく上で様々なヒントを与えてくださいました。
講演終了後も会場から質問が寄せられ,活発な議論が行われました。
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講演中の綾部教授 |
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(薬学研究院・薬学部) |
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